マクロン大統領の妻を巡って中傷合戦まで繰り広げたボルソナロ大統領だったが、「消火活動に真剣に取り組まなければ南米関税同盟との自由貿易協定(FTA)を批准しない」とEUから脅されたり、ブラジル製品の輸入規制や不買運動を求める声が広がると徐々に態度を軟化。使い道をブラジル政府が決めるなどの条件付きでG7各国からの支援を受け入れることを表明した。
消火活動にようやく本腰を入れて軍を投入、違法な伐採や焼き畑の取り締まりも強化した。またボリビアやコロンビアなどアマゾンを抱える7カ国の首脳らが協議して、大規模火災に対処するネットワークを構築したり、違法伐採の監視や森林再生などで協力していく協定を結んだ。
上から目線ではない世界ファンドを
しかし、当事者たちだけでアマゾンの森林破壊を食い止めるのは難しいだろう。いくらヨーロッパを中心とした国際社会が「アマゾンは地球全体の酸素の20%を供給する『地球の肺』、世界最大の熱帯雨林を守れ」と叫んだところで、そこで暮らす人々にとってアマゾンは「酸素の供給源」よりも「生きる糧」、ボルソナロ大統領が言う「経済資源」なのである。国際社会では批判されているボルソナロ大統領も、国内の支持率はおおむね良好で、大統領と同じように外国からの干渉に反発を覚える国民は少なくない。森林保護を国内政治だけで解決するのは非常に難しいのだ。
森林火災の消火や森林保護にクラウドファンディングを利用する動きも出てきている。森林保護と開発のバランスが取れるように、上から目線にならない形で国際社会が力を貸していくことが必要だろう。
自然には再生能力があるから、焼け野原から若芽が芽吹いて、いつの日か森林は蘇る。高温多湿の熱帯雨林であれば、再生スピードも早い。
しかし森林火災や開発によってアマゾンの熱帯雨林は「破壊」が進行している。世界の科学者たちが心配しているのは、熱帯雨林の破壊が進んで再生不能の臨界点を超えてしまうことだ。世界最大のサハラ砂漠はかつて広大な森林地帯だった。アマゾンの破壊がこれ以上進行するとサバンナ化、さらには砂漠化するサイクルに突入する恐れがあるという研究報告もあるのだ。
燃え続けるアマゾンの森林火災を地球温暖化の観点から懸念する声も多い。アマゾンの熱帯雨林は地球の酸素の供給源であるとともに二酸化炭素の吸収源であり、これを焼失することは地球温暖化につながるという見方だ。しかし、これは科学的とは言えない。