企業がSDGsに取り組むうえで、まず行ってほしいことは、採択文書すべてを読むことです。全体で36ページ程度ですが、そこには目標やターゲットのほかにも前文、宣言、ビジョン、実施手段などが書かれています。これらを熟読することで、SDGsを正しく理解でき、インスピレーションを膨らませることができるはずです。

SDGsには2つの根本理念があります。1つは「大変革」です。貧困や環境などの大きな課題を解決するには、現在の社会の仕組みを大きく変える必要があります。大きな変化は、ビジネスチャンスにもつながります。もう1つは「誰ひとり置き去りにしない」。貧困や格差をなくし、より包摂的な社会をつくらなければならない、ということです。この2つの理念を踏まえて、SDGsに取り組むことが重要です。

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では、企業はSDGsにどのような姿勢で取り組めばよいでしょうか。ここでは、2つのポイントを紹介します。

1つは、「インサイド・アウト」ではなく「アウトサイド・イン」でアプローチすることです。「何ができるか」ではなく、外部環境を起点に「何をすべきか」を考えるということです。例えば、温暖化対策の枠組みであるパリ協定では、産業革命以前に比べて地球の平均気温の上昇を2.0℃に抑えることを目標にしています。そうした長期目標を実現するために企業としてどうすべきかを考えるのがアウトサイド・インのアプローチです。多くの日本企業は、着実に改善を積み重ねたり、達成可能な目標を立てるインサイド・アウトのアプローチをとりがちですが、それではSDGsを達成できるような大きな変化を起こすことはできません。

もう1つは、バリューチェーン全体を俯瞰し、正と負、両面の影響を考えることです。製造業であれば、原材料の調達から製品の廃棄までの流れを見渡し、SDGsとの関係から社会や環境に与えるインパクトが大きな領域を特定し、取り組む優先順位を決めます。そこで注意すべきは、ネガティブインパクトにも目を向けることです。SDGsというと、ビジネスチャンスの側面ばかりが強調されがちですが、企業が引き起こす可能性のある環境汚染や人権侵害などの問題も同時に考える必要があります。

特に最近は、人権侵害を未然に防ぐために、人権尊重を企業のマネジメントに組み込むことへの要請が高まっていますが、これもSDGs達成に向けた取り組みの1つといえます。SDGsの根幹には、人間の尊厳を守るという理念があるからです。