ひげそりもリップクリームもないけれど「快適」

サンフランシスコのアマゾンゴーにひげそりはない。モバイルバッテリーやリップクリームもない。品ぞろえで優先されるのは手軽でおいしい食事購買体験で、コンビニエンス(便利)というよりカンファタブル(快適)だ。にこやかに迎えられ、欲しいものを取って、ただ立ち去る。それは、レジに列を作って並ぶストレスからの解放なのだ。

それに加えて、アマゾンゴーのスタッフはまるでテーマパークのキャストのように、この体験をサポートしてくれる。

テクノロジーと人が作るこの体験こそが、アマゾンゴーが提供するものなのであろう。

私の調査から推計すると、来店人数の平均は30分で20人なので、1時間で40人となる。営業時間は14時間(7〜21時)なので、1日の客数は560人だ。これはアマゾンが計画する1日平均400〜700人に当てはまる。客単価が10ドルで、年間313日の営業(※毎週火曜休み)で175万ドルとなり1ドル110円とした場合約1億9000万円の売上だ。

日本のコンビニは5万6000店舗で約11兆円と1店舗当たり1億9600万円(JFA2018年統計)。売上的には同水準だが、アマゾンゴーは24時間営業でも無休でもない。また、アメリカのコンビニが1.5倍差をつけられている事から、日本をターゲットとした場合、日本のコンビニの1.5倍のパワーを持つ仕組みとなっているであろう。

とことん「顧客体験」に寄り添うアマゾンゴー

アマゾンゴーがコンビニの1.5倍以上の売上を出せる理由は、利便性を追求するのではなく、とことん顧客体験に寄り添うことと、顧客体験データを活用した仕組みだ。サンドイッチコーナーに多面展開されているドリンクも、顧客の行動や購買の分析から選定されているのだろう。

テクノロジーと人によってデザインされた、ストレスなくおいしい食事を買う顧客体験の提供とともに、購買とカメラ等の行動データから、キッチンで作る在庫のコントロールや購買単価が上がり、滞在時間を短くするPDCA活動がされているのは間違いない。

アマゾンゴーが今後、飲食以外の品ぞろえをしてくるのであれば、コンビニは本格的に淘汰されるであろう。今回の調査では、それぐらいのパワーを感じた。

ただ、課題もいくつかある。商材を増やす事でアマゾンの求めるレベルの顧客体験価値が生まれるのか。テクノロジーと人のコストを上回る、単価、リピート率のアップができるのか。今後の展開では、そうした点に注目すべきだろう。

伴 大二郎(ばん・だいじろう)
オプト エグゼクティブスペシャリスト パートナー兼OMOコンサルティング部 部長
小売業でID-POSデータのデータマイニングやCRM戦略を10年担当し、ロイヤルティプログラムの導入、POSの回収、DM、ECの改善、クレジットカード事業の立上げをした後にオプトに入社。企業のデータ分析から、ユーザー行動を軸にDMPやMAを活用したデータドリブンマーケティングの支援およびコンサルティングに従事。2019年4月より、エグゼクティブスペシャリストとして、リテールのデジタルシフトに注力。
(写真=iStock.com)
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