チーズトーストでおなかがいっぱいになる

シズラーの場合、グリル料理をコックが作るので一般的なビュッフェよりも人件費はかかっている。しかし、ビュッフェとグリル料理を別料金にしたことで利益はしっかり取れているのだろう。しかも、肉料理は焼くだけなので他の料理よりも手間がかからない。あれやこれやとさまざまな料理を出すホテルのビュッフェレストランよりも、人件費は安く済んでいると思われる。

さらにシズラーはサラダバーに特化したことで利益率をさらに高めていると言える。サラダをメインにすれば訪れるのは女性客が中心となる。胃袋は必然的に男性よりも小さくなるので食べ放題といっても限界はすぐにやってくる。少なくとも食欲旺盛な子供が喜ぶ焼き肉食べ放題のお店に比べれば、サラダの食べ放題のほうが料金以上に食事を食べられてしまうリスクは抑えられる。そこに女性が大好きなグラタンやパスタなどの料理が加われば、満腹になる速度はよりいっそう早くなる。

「チーズトースト」(画像=ロイヤルホールディングス資料)

秀逸なのは食事前にスタッフが案内するチーズトーストだ。「当店で一番おすすめの料理なので、ぜひ食べてください」と勧められるので、いや応なしに注文してしまう。しかも、このチーズトーストがお世辞抜きで絶品! 最初は1人前で頼んでしまったが、あまりにもおいしかったので追加してしまったぐらいだった。

結果、シズラーがお勧めするチーズトーストが、一番おなかが膨れてしまう料理だったこともあって、次に食べる料理の量は抑えられてしまった。これがシズラーの戦略なのかどうかは定かではないが、できるだけ早くおなかがいっぱいになる料理を提示することは、回転率を重視するビュッフェ形式のレストランにとっては有効な策のように思えた。

飽きられてしまうことへの懸念

しかし、実際に足を運んでみて、シズラーのビジネスモデルにまったく死角がないとは言えないところもあった。

まず、ビュッフェ形式のビジネスモデルは差別化が難しいという点である。ビュッフェ形式はさまざまな料理を提供できる反面、手の込んだ料理を提供することが難しい。少しでも個性的な料理を出してしまうと客から避けられてしまい、大きな食材のロスが出てしまう。これがホテルのビュッフェであれば季節や企画に応じた魚料理やスイーツなどを提供することができるが、“サラダバー&グリル”とコンセプトを固定してしまったシズラーの場合、メニューのバリエーションが狭められ、飽きられてしまうリスクが出てきてしまう。