では、もし電車で「この人、痴漢です」と腕をつかまれたらどう対応するべきなのか。
「まず反射的に『すいません』と言わないようにすべきです。日本人は相手が怒ると、理由がわからなくても謝る傾向がある。何か迷惑をかけたかなと思って一応謝っただけでも、相手が『痴漢を認めた』と勘違いして思い込みを強めることもあるので要注意です」
痴漢に疑われて駅員室に行ったらアウトだから、すぐ逃げろ、というアドバイスも聞くが、いまは監視カメラが多く、逃げるのは困難。今村弁護士も「むしろむちゃをして事故を起こすリスクが怖い」と懐疑的だ。つまり、いったん女性に痴漢だと言われたら、それが嘘や勘違いでも、逮捕から逃れる方法はないのだ。
無罪となるには、逮捕されても否認を貫くしかないが、18年逮捕されたカルロス・ゴーン被告と同様、いわゆる「人質司法」が適用され、罪を認めないと勾留が長期化する可能性がある。だから、弁護士には毎日接見に来て支えてもらうべきだという。
「冤罪と闘おうと思っていても、人間は孤独になれば、グラッとくる瞬間が必ずやってくる。そこで気持ちが折れてしまわないような環境を自ら作っておくことが大切です」
いまこそ「疑わしきは被告人の利益にする」という基本に立ち返る制度改革を期待したいところだ。