移民を歓迎した国は繁栄する
――移民を受け入れると社会が不安定になるという指摘もあります。アメリカは「同化政策」を取っています。
確かに同化政策のほうがいい。引き起こされる緊張がより少なくなるからだ。でも、それほど悩むことではない。アメリカで生まれた子供は自然に同化するからだ。
――アメリカにも人種問題はありますが、日本でも日本生まれの非日本人に対する差別が根強くあります。シンガポールはどうですか。
過去50年と比較すると、シンガポールは外国人に対する受容性が低くなっている。経済が失速してくると、他人のせいにするようになる。シンガポールは経済の失速を外国人のせいにし始めていて、外国人がシンガポールに移住するのがますます難しくなってきている。
首相のリー・クアンユーは二世のシンガポール人であり、シンガポール人のほとんどが二世か三世だ。みんな同化している。でも経済が失速してくると、それを新しい移民のせいにする。
――アメリカは移民の国であり、移民がいるから成功したとも言えます。
アメリカが繁栄したのは移民がいるからだ。シンガポールが成功したのも移民のおかげだ。移民を歓迎した国は成功して繁栄している。今日本にいる8歳の子供が40歳になったときに何と思うだろうか。生活水準が下がり、膨大な国の借金があることに感謝するだろうか。「借金をふくらませてくれてありがとう。生活水準を下げてくれてありがとう」と言うだろうか。はなはだ疑問である。
消費増税を実行しても日本経済はよくならない
――昨秋、日本株をすべて売りましたね。何が引き金になったのですか。
一つのことが引き金になったのではない。世界経済について懸念を覚え始め、安倍首相は消費税増税を行おうとしている。総選挙も近づいている。安倍首相が自分のやろうとしていることをすべて実行するなら、日本経済はよくならない。株価は高かったので、売るべき時だと判断した。株価が最終的な引き金だと言ってもいい。朝起きて突然売ろうと決めたわけではない。
――昨年7月に私がインタビューしたときには、まさかあなたがその秋に日本株を売るとは思いませんでした。
私もそのときは秋に日本株を売ろうとは思っていなかった。だが、変化に対応しなければひどく損を被る。
――日本株を売った時には、かなり儲かりましたか。
かなりの利益を得た。
――利益が出ると思わなかったら、売らなかったのですか。
そんなことはない。場合によっては損をしたほうがいい場合もあるからだ。