2019年10月には8000円台に「値上げ」の恐れ

その上、“○○周年記念イベント”と銘打った大規模なアニバーサリー行事を行い、入園者が常に新しい楽しさを見つけ、ディズニーの世界を満喫できるよう取り組んだ。それが、長期にわたってヒットし、価格の引き上げと入園者の増加を同時に実現することができたのである。

2014年度、入園者数は3130万人を超え過去最高を記録した。その後、2018年度は過去最高を更新するなど好調だが、かつてのような伸びは期待できそうにない。さらなる業績拡大のため、10月の消費税率の引き上げに合わせ、現在7400円の入園料は引き上げとなる可能性が高い。価格は8000円台に達する可能性がある。一般的な感覚として、これは高い。テーマパークの拡張などを行い、それに見合った入園料を設定する発想が人々に支持され続ける保証はない。

値上げへの抵抗感を解消する手段として注目されるのが、「ダイナミック・プライシング(変動価格制度)」だ。これは、季節や入場者の込み具合に応じてチケットの価格が変動するシステムである。つまり、需要が低下する閑散期は価格を抑え、繁忙期は高めに設定するのである。

「8000円でも安い」と感じる人もいるはず

米国では、スポーツやコンサートなどのチケット価格が需給に応じてダイナミックに設定されることが社会に浸透している。わが国のJリーグでもダイナミック・プライシングを導入するチームが現れ、売り上げの増加が報告されている。1月からは、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンがチケットの変動価格制度を導入した。

従来、企業は、チケットの内容に応じて単一の価格を設定してきた。長らく、わが国ではその発想が常識だった。ただ、8000円のチケットを高いと思うか否かは、十人十色である。ディズニーランドが好きな人は、イベントに合わせて(繁忙期に)行きたい。そうしたファンとって価格の高低はあまり重要ではないだろう。「8000円でも安い」と感じる人もいるはずだ。一方、「試しに行ってみよう」と思う人には価格水準は重要だ。

需要に応じて価格をダイナミックに設定することは、企業が個々人の価値観に対応することを可能にする。消費者は自らの価値観にあった価格を選択でき、より高い満足度を得られるだろう。ダイナミック・プライシングは、顧客層の拡大と設備の稼働率向上を目指すために有効な手段といえる。それと同時に人材の育成などが進めば、テーマパークの魅力・満足度は一段と高まる可能性がある。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
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