TOPIC 5【高齢化社会】
団塊の上の世代が後期高齢者に。そして第4次産業革命へ

自分で稼ぐことが、ますます厳しく求められる

日本は世界一のスピードで高齢化の進む社会であることは周知の通りです。しかしいまだにその少子高齢化の社会に適した社会システムが完成しているとはいえません。25年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になるため改革は待ったなし。一方、高齢化の進む社会でいかに活力のある社会を維持するかも大きな課題です。

PIXTA=写真

基本的には、合計特殊出生率が2.07か2.08ないと人口は減っていきます。日本の出生率は17年で1.43と非常に低い。その一方で、医療の進歩があって、長寿になっていくということを考えると、少子高齢化が反転することは考えられません。

こうした状況下で、我々はどうしたらよいか。社会保障の仕組みは自助、共助、公助という考え方の組み合わせです。自助というのは自分でやる、共助というのは保険、公助というのは税金です。高齢化に合わせて、公助が増えていくということは、働く世代の税金が増えることを意味しますから、限界が来ます。そこで自助、自分でやる、自分で稼ぐということがますます厳しく求められてくるのです。

新しい元号で気持ちをリセット、変更に備える

社会保障制度の改革も本格化してくるでしょう。25年には団塊の世代が全員後期高齢者になるため、これまで以上に、いろいろな意味で後期高齢者に多くの予算が必要になってきます。

だれもが25年になると大変だと言うのですが、それは25年になると団塊の世代が全員後期高齢者になるから大変だと言っているにすぎず、実は、団塊の世代の最初の年代層が後期高齢者になるまでに、制度改革を果たしておかないといけないのです。その意味で、19~20年は、制度改革を実施する大変重要な年だと思います。

社会保障改革はやらなくてはいけないのですが、まだ十分には改革されていません。恐らく政治的には、19年7月の参議院選挙を経てから、改革の議論が本格化し、大変重要になってきます。

また、19年5月には新天皇が即位され、元号が新しくなります。元号制というのは、現代では日本独特の制度で、実は大和時代から奈良時代の最初ぐらいまでは、改元ばかりでなく遷都もしていました。それほどまで新天皇が即位されるということは、日本国民にとって一大イベントだった。その意味で、新たな元号の時代には、気持ちをリセットして、新しい変化に備えるといういい契機になると思います。

日本の努力次第ですが、恐らくもっと大胆に変わらなければいけない時代になる。新しい第4次産業革命の下で、今まで繁栄していた企業が一気に基盤をなくすこともあるし、逆に今まで想像もしなかったような企業が出てくる可能性もあります。

99年に設立され14年にニューヨークに上場したアリババという中国のネット通販企業は、日本最大のトヨタの約2.5倍もの時価総額がつきました。平成の時代にもそういうことが起こったし、その変化は今後もっと早くなる可能性があります。

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
1951年、和歌山市生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣の経済財政政策担当大臣に就任。09年パソナグループ会長。16年東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。近著に『この制御不能な時代を生き抜く経済学』など。
(取材・構成=原 英次郎 撮影=村上庄吾 写真=時事通信フォト、PIXTA)
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