肺がん全体の約85%を占める「非小細胞肺がん」の胸腔鏡手術の治療費は、入院(10日)・手術費は165万円、定期検査費が6万円で、1年目の自己負担額は約12万円。定期検査は2年目16万円で自己負担5万円、3年目以降8万円で、自己負担は2万円になる。

高額ながん免疫治療薬で知られる「オプジーボ」は、この18年11月に薬価改定で値下げされたが、その治療にはどのくらいかかるのか。

「オプジーボは非小細胞肺がんや手術ができない胃がんにも健康保険の適用が承認され、薬剤費は1年で約1100万円かかるものの、高額療養費制度の対象になります」(笠井氏)

粒子線治療などの先進医療は、18年4月に認められた前立腺がんなど一部を除き、公的保険の適用外だ。陽子線治療は約280万円、重粒子線治療は約315万円の自己負担となる。

治療費以外の“諸費用”も軽視できない。入院には差額ベッド代が付きものだし、有料テレビのカード代や退院後に通院して抗がん剤治療をするといったケースも多いので、そのための交通費、宿泊費などもばかにならない。

生活習慣病は、長期通院で100万円超え

死因第2位の心臓病はいくらかかるのか。心疾患の大部分を占める虚血性心疾患の平均治療費(入院)は、約74万円(16年度厚生労働省医療給付実態調査)で、自己負担額は約22万2000円になる。脳血管疾患の平均治療費は、約76万円で自己負担額は約23万円となるが、もちろん高額療養費で戻ってくる。なかでも脳卒中は、一命を取りとめても、手足の麻痺や言語障害などが残る可能性が高く、長期間の入院やリハビリを強いられることもあり、平均以上に費用がかかる可能性が高い。

医療費では手術や抗がん剤治療など高額化するがん治療が注目されがちだが、「高血圧や糖尿病など生活習慣病は1カ月の医療費が高額になることはありませんが、20年、30年と一生付き合う場合もあります。長期の通院、服薬の手間も考慮すると、がんよりも高額化する可能性もあります」と久住先生は指摘する。

炭水化物や糖質の取りすぎによる2型糖尿病は、「インスリン」の血糖値を下げる能力を超え、血液中の糖分濃度が高くなる。