「配給回数」は8年前の10倍に
同社の小谷浩樹会長は「現在取り扱っているコンテンツは、8割が音楽関係、宝塚や2.5次元などを含め演劇関連が1割、その他が1割という内訳です」と説明する。
「相性がよく、この数年で特に増えたのが2.5次元舞台ですね。年間上演作品数が増えた結果、公演会場が押さえられなくなり、1作品ごとの上演回数が少なくなっていることと、同じく作品数の増加で役者さんのスケジュールが押さえられず、地方を回れなくなっていることで、LVの需要が高まっています」
ファンの間でLVの存在が広く認識され、「チケットが取れなかったから映画館に行こう」という流れができているわけだ。だが、創業当初はなかなか理解が得られなかったという。2011年(6月~12月)の中継実施回数は20回だった。2017年の194回という数字と比べると、10分の1しかない。
「ファンの方々もアーティスト側も、ライブ・ビューイングとは何なのか理解が進んでおらず、なかなか上映本数が増やせませんでした。ライブを観る人数が増えたら、映像ソフトが売れなくなるのではないかという懸念を持つ方もいて、アーティスト側がかなり慎重だったのです。ですが、徐々に理解が進み、むしろライブを観たファンほど思い出としてソフトを買うこともわかってきたので、現在はそうした理由で拒否されることは非常に少なくなりました」
ファンは喜び、会場での物販なども期待できるとあっては、アーティストにとってはいいことずくめに思えるが、それでもまだ首を縦に振らない人はいるという。
「ライブはあくまでも会場に来ていただいているファンのためのものと考えている方や、戦略的にチケットを取れないことでライブの価値を高めようとしている方などは難しいですね」
映画館の稼働率を上げるための施策だった
一方、会場となる映画館側はLVの増加を歓迎している。「LVでもいいから観たい」とファンが思えるほどのコンテンツが対象になる分、映画よりも稼働率が高く、悪くても座席の7割以上埋まることが多い。チケット価格も、映画が平均単価1200円前後であるのに対し、LVは3500円~4000円程度と3倍近い。また、通常の映画に比べて長時間にわたることが多く、特に音楽ライブやスポーツ中継では飲食物を買う人も増えるため、劇場自体の収入につながっている。
そもそもこれほどLVの数が増えたのは、映画館側の事情もある。