日本財団に助成申請の計画書を提出する前に子会社の専務を任期途中の60歳で辞め、自宅を事務所に「アジア教育友好協会」(AEFA)を2004年6月に立ち上げた。とはいっても具体的な活動理念が浮かばない。とにかく現場を見ようと商社流の現場主義でラオスなどの山岳地帯に単身で乗り込んだ。そこで少数民族が暮らすアジアの貧しい山岳地帯に絞り、学校建設だけではなく、学校に通う子供たちの親や村人が建設に参加することと、現地の学校と日本の学校との交流を実現させるアイデアが閃いた。

「学校を単なる箱物の校舎にしてはいけないと思いました。生徒や先生、保護者、その周りの村人が学校づくりに参加することで学校を中心に村が1つにまとまることができます。また、現地の子供たちが家の仕事を手伝い、能動的に動かなければご飯さえ食べられない厳しい現実を、手紙や作品を通じて知ることで日本の子供たちも刺激や様々な気づきを与えられています」

手探りから始まった学校づくりは18年で280校、日本の交流校も100校を超える。交流の一環として谷川さんたちボランティアが現地の子供たちの生活ぶりを伝える「出前授業」も680回を超えた。今では財団の資金支援もなくなり、学校づくり以外に寄付金集めにも奔走している。

建設費用は1校600万円と決して大金持ちでなくても出せる金額だが、人生最後の生き甲斐や記念にと寄付を申し出てくる高齢者もいる。支援者が単にお金を出すだけではなく、建設前や開校式に案内し、村人と交流する支援者参加型の活動もしている。「案内の際、支援者がビジネスクラスなどの航空券を希望しそうな場合は、相手の方に気を使わせないように、自分の飛行機はネットで格安航空のエコノミーチケットを購入し、先に行って現地でお迎えするようにしています」。

経費を少しでも抑えたいからだ。他のNPOと違って現地に駐在員を置かず、倹約に努めている。谷川さん自身も贅沢とは無縁の生活を送っている。

「妻の母を看取って以来、17年間、朝昼晩コンビニ弁当です。コンビニはいろんな種類の弁当を売っていますし、今日は野菜がたくさん入っているのにしようとか、肉系、魚系にしようとか、贅沢しても一食500~600円。たまに今日はいい日だからと缶ビールを1つ買うこともありますが、家では一缶以上は飲まないようにしています」