一方、「親は金持ちだから」とボンヤリしていると、子ども世代も痛い目をみる。親から住宅費や教育費を援助してもらっているケースは典型的だ。親は「自分たちは家を買えたのに、子どもたちが買えないのは可哀想」などと、つい「援助しすぎる」きらいがある。結果、虎の子の老後資金がみるみる減ってゆく。

親の援助を得て、身の丈以上の生活レベルを手に入れてしまった子どもはどうなるか。「それはドーピングみたいなものです」と藤川氏は言う。効果が続くのは、親の金が尽きるまでのわずかな期間だけ。親からの援助が止まったとたんに、子どもは窮地に追い込まれる。生活レベルを落としたくても、身の丈を超えて高級住宅地に住んでいれば、近所の手前、高水準の生活を続けねばならなくなる。

「75歳の高齢の方が、40代の息子さんに月10万の仕送りをしていたケースがありました。アルバイトをしてお金を工面していたのですが、体が持たなくなりました。息子さんはきちんと自立されている会社員ですが、自分の仕送りをアテにしていて、仕送りをしないと教育費も払えなくなるというんです」(藤川氏)

しかし、親の懐具合を聞き出すのは、気が引ける。そこで藤川氏が勧めるのが、エンディングノートだ。遺言と違い法的な効力は持たないが、親の心情をオープンにしてもらうツールとして使える。

「親がこれからの人生をどう生きたいのか、思いをノートに記してもらいます。子どもたちはそれを実現すべく、財産の使い方を考えてあげればいいのです。どんな暮らしがしたい? そんな会話をするうちに、親の家計の状態も見えてきます」(藤川氏)

また親が長生きするほどに膨らんでいくのが、医療費や介護費だ。制度が複雑すぎて、高齢者には理解できないことも多い。「実家に戻るタイミングで、1年間にどれだけ払っているか、確認したほうがいいでしょう」と、藤川氏。健康保険や介護保険に加入していれば、どちらも自己負担は原則1割(※)。手術などで多額な支払いが発生しても、一定基準を超えた医療費は払い戻しが受けられる。

「だから普通は、医療費や介護費が家計破綻につながることは少ないのです。しかし、保険の適用範囲外のサービスを受けていたら別。実家に帰ったら、そこをチェックしましょう。例えば介護でも、食事の宅配サービスを受けたり、入浴回数を規定以上に増やした場合、全額自己負担になることもあります。自己負担額が高くなる設定になっていても、そんなものだと思って払っている人もいます。親は『専門家が決めたことだから間違いない』と信じているかもしれませんが、そこは子どもが冷静にチェックしてあげるべきです」(藤川氏)

※健康保険は75歳以上、介護保険は65歳以上。