1度辞めたら、介護前の年収に戻れない

親の介護のために離職をする「介護離職」が社会問題化している。介護施設に預けようにもパンク状態。しかし「親を放っておくことはできない」ため、会社を辞めて介護をするという選択だ。その間の定収入は親の年金のみ、不足分は貯金を取り崩して埋め合わせをするほかない。さらに深刻なのは、親が他界したあとのことだ。ブランクが長くなるほど仕事探しは難しく、まして介護離職前と同じ額の収入を得るのは、まず不可能。介護離職は、親子破綻の直接のきっかけになりうる。

「これからは、仕事を辞めずに介護する時代です」。自身も両親を介護した経験を持つジャーナリスト、おちとよこ氏はそう断言する。

「介護は初めから寝たきりになることは稀ですから、即『施設』と慌てることはありません。それに私たち素人が親のそばについていたからといって、親が満足する介護はできませんよね。介護はプロに任せて、私たち素人は親のことを最もよく知る人間として、“マネジメント”に徹したほうがいい。ヘルパーやケアマネジャーといった専門職とコミュニケーションをとり、彼らをコーディネートしていく。それが充実した介護と介護離職を防ぐポイントです」

▼「子」に連鎖破綻 3大要因
【マイナス遺産】破綻
親世代に遺産と呼べるほどのお金がないのは当たり前の時代。しかし、親のアパート経営の失敗などでマイナスの遺産を背負うことも。
対処法:生前に親の“隠れた借金”を聞いておくこと
【介護離職】破綻
親の介護のためにと子どもが離職。介護中の生活費は親の年金頼み。復職しようとしても前職と同水準の賃金を得るのは難しい。
対処法:絶対辞めない。介護サービスなどできるだけ周りに頼ろう
【教育費】破綻
私立大学の学費など、年々上がっている教育費。親からの援助が途絶えたら、一気に家計は火の車に。
対処法:親に依存せず、身の丈に合った教育費を探る
25年間の物価や平均年収の上昇率に比べると、学費の上昇率は高く、家計を圧迫している。
※学費は入学金と授業料の合算。国立大学の平成16年度以降は国が示す標準額。私立大学は平均額。文部科学省調べ。