介護で親子破綻を防ぐには、「親が倒れる前」に先手を打つことが肝心だと、おち氏は続ける。
「介護は突然やってくるものと思いがちですが、必ず予兆があります。それを発見するには、抜き打ちで訪ねてみることです。あらかじめ子どもが帰ってくるとわかると親も頑張って掃除したり、元気なふりをします。でも予告なしにいくと、冷蔵庫には賞味期限切れのものやお酒しか入っていなかったり、庭が荒れ放題などと、異変に気づくことができます。仮に認知症でも、早期発見ができれば、進行を穏やかにできますし、地域の助けも借りやすいものです。早めに介護サービスを受けて見守れば、突然のXデーに慌てることもありません」
親を遠距離介護する場合、やっておきたいのが、「地域包括支援センター(以下、「包括」)」に足を運ぶことだ。包括は高齢期の医療や介護、生活支援など、高齢者にまつわるあらゆる相談を受け付ける、“よろず相談支援窓口”だ。住んでいる地域ごとに担当が決まっており、支所を含め全国に7000カ所以上が設置されている。
「包括は介護予防も行っているので、早めに相談するのがコツ。何歳で、どんな持病があってと細かく記録されるので、いざというときも、電話1本で話が通じる。自分がすぐに駆けつけられないときも、手が打てるので頼りになります」(おち氏)
介護保険証もチェックしよう。「65歳になるまでは介護保険証は送られてこないので、見たことがない人も多いと思います。親の介護保険証を一緒に見ることは、介護に関して親と話すいいきっかけになります」(おち氏)。裏面に要介護度や、その有効期限を記す欄があるが、そこが空白や期限切れだとサービスは受けられない。まずは親が困っていることがないか、聞き出すことから始めよう。
1人暮らしの親の場合、やっておきたいのが、健康保険証やお薬手帳、診察券のコピーと緊急連絡先を記した紙を冷蔵庫に入れておくこと。
「救急車を呼んだとき、どんな持病があるのかわからないと、適切な搬送や治療が素早くできません。親御さんが電話で救急車を呼んだ際、『医療情報は冷蔵庫にあります』とだけ伝えればすぐに対応できます。冷蔵庫の場所はどこの家でも救急隊員が見つけやすいからです」(おち氏)
帰省時に主治医に会って親の病状を聞いておくのも手。転ばぬ先の杖と肝に銘じて実行しよう。