未来の自分を想像するのは自己暗示の一種

この「未来の自分」を想像する、という手法は脳内の「ミラーニューロン」という神経細胞を使った、自己暗示の一種です。1996年、イタリアの脳科学者によって、脳内のミラーニューロンという細胞の働きによって、「緊張している人がそばにいると緊張する」という現象が起きることが証明されました。

この緊張している人の脳の状態をまねる現象と同じように、「10年後の自分」を想像したときに、10年後の自分の脳の状態につながって、「10年後の自分の脳の状態をまねする」ことができるかもしれない。

そういった「未来の自分の脳をまねする」というイメージによって、「過度に狭くなった視野」を打破することができるのです。

すると、脳が10年後の自分の脳と同じように「シーン!」として気持ちがいい静けさになったりします。幼稚園児の駄々っ子状態だった脳が、10年後の自分の脳をまねたときに、嫉妬の発作はおさまって、いつの間にか無限の静けさの中に漂っていたりするのです。

既読スルーは「どうでもいい」

ある女性は、女性が集まる場で、「なんで? あの人ばかり話の中心になってずるい!」と嫉妬してしまっていました。

大嶋信頼『消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法』(すばる舎)

でも、嫉妬すればするほど、なんだか自分だけが仲間はずれにされているように感じ、周りの人が自分の陰口をたたいている、という感覚になっていきます。LINEなどでも、「なんで私のコメントだけ既読無視?」「絶対にあの人がやっているにちがいない!」という感じで怒りがおさまらず、ムカついて食べるのが止まらなくなっていたのです。

そんなときに、「5年後の自分」と思ってみます。すると、「あれ? なんで自分はみんなの中心的な人物になろうとしていたんだろう?」とちょっとびっくりします。「あの人に任せていれば、自分は楽ができるし」と思えるようになり、「5年後の自分ってすごい!」と感動します。

LINEのグループ画面を開いたときに、一瞬嫉妬の発作が起きそうになっても、「5年後の自分」を想像すれば、「そんなにマメにチェックしなくていいのかも!」と思って画面を閉じることができます。気が向いたときだけコメントするようになったら、「ちゃんとみんな私のコメントに反応してくれるようになった!」となるから、おもしろいのです。

5年後、10年後、そして15年後や20年後の自分の脳にアクセスしてみる、と思ってみると、嫉妬の発作がいつの間にかおさまって、周りの人たちと不思議な一体感が感じられるようになります。

嫉妬から解放されると、人の成功をまるで自分のことのように、「うれしい」と思うことができ、一体感を抱いたときに、不思議と力がわいてきます。

「よ~し! 自分もやるぞ!」と、それまでできなかったことに挑戦できるようになり、それまで見えなかったことが見えるようになります。

もし、「ずるい!」「不公平!」と思うことがあったら、まずは一呼吸おいて、「10年後の自分」を想像してみる。それでモヤモヤが晴れるかもしれません。

大嶋信頼(おおしま・のぶより)
心理カウンセラー
米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。ブリーフ・セラピーのFAP療法(Free from Anxiety Program)を開発し、トラウマのみならず多くの症例を治療している。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長などを経て、現在は株式会社インサイト・カウンセリングの代表を務める。カウンセリング歴25年、臨床経験のべ7万9000件以上。
(写真=iStock.com)
関連記事
頭がいい子の家は「ピザの食べ方」が違う
本当は恐ろしい"男女で一線を越える行為"
コンビニの「サラダチキン」を食べるバカ
人の気持ちがわからない人の致命的理由3
富裕層は「スマホ」と「コーヒー」に目もくれない