現在は、一定の要件を満たしたバリアフリー改修工事をして50万円以上かかると、「バリアフリー特定改修工事特別控除制度」で最大20万円の所得税控除が受けられます。また固定資産税の3分の1が減額される優遇制度もあるので、事前に税務署や市町村に確認を。

改修費用が介護保険の給付を超えても、身体障害者手帳や自治体独自の給付、税制優遇を余すところなく使えば、かかる負担はかなり軽くできます。

障害者手帳では、等級によって水道代や公共交通機関などの割引、自治体からの補助等が受けられます。

要介護申請をしても「非該当」になると介護保険は利用できませんが、17年4月からは、各市町村に介護予防、自立支援の拡充が課せられ、見守りや配食、通所サービスなど市町村の総合事業が始まっているので、確認を。

ただし、これらはすべて事前手続きや申請が必要。税控除は申告期限があります。情報は向こうからは歩いてきません。包括やケアマネジャー、障害福祉担当にどんどん聞いてみましょう。

これからは働きながら介護するのが当たり前の時代になります。介護保険や自治体のサービスを利用しても、容体の急変や緊急事態で、仕事を休まざるをえないこともあります。その場合は勤務先の年次有給休暇のほか、介護支援制度を上手に活用しましょう。

国の法律では、介護が必要な家族ひとりにつき、年間5日間の介護休暇が半日単位で取得できます。さらに93日間、3回に分割して休業を取れます。その間は給与の67%の介護休業給付金が雇用保険から支給されます。また労働時間の短縮やフレックスタイム、始業、終業時間の繰り下げ、繰り上げ等の制度を企業が行うこととされています。期間延長や上乗せ支援を行う企業も増えているので、事前にしっかり確認を行いましょう。

使える制度をフル活用して、仕事を辞めないこと。それが一番の経済的安心の礎。最近はテレワークやサテライト勤務など、多様な働き方が推進されつつあります。仕事と介護の両立を糸口に、真の働き方改革の実践が広がることを願っています。

黒田尚子
CFP(R)
乳がん体験者コーディネーター。2009年末に乳がん告知を受ける。著書に『がんとお金の真実』『親の介護は9割逃げよ』など多数。
 

おちとよこ
医療福祉ジャーナリスト
高齢者問題研究家。高齢者介護、医療、福祉などをテーマに活躍。著書に『一人でもだいじょうぶ 仕事を辞めずに介護する』など。
 
(構成=早川幸子 写真=Getty Images、iStock.com)
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