ところが、女性医師にはこの作戦は通用しない。医師の世界で男性は保守的、女性は進歩的な事が多い。食いっぱぐれのない医師は、親が子どもに勧める職業だ。男性医師の多くは親や教師の勧めに従って、医学部に進む。一方、女性は違う。苦労を知りながら、「女だてら」に医師になる。多くの女性医師は、狭い医局の世界で出世争いに汲々とする男性医師をみて嫌になり、医局をやめていく。

大学は「教授」の肩書きを医師に無視されるのが怖い

「週刊ポスト」(8月10号)は、製薬企業からの支払いが多い主要医学会の幹部医師50名の実名を報じている。その中に含まれる女性はわずか1名だった。

大学病院から女性医師が去っていくのは、勤務態勢が劣悪という理由だけではない。診療や研究そっちのけで、教授に媚び、製薬企業にたかる体質に嫌気を起こすからだ。

東大医学部を卒業した知人の女性医師は「男性は本当に肩書きが好きです。私たちにはわからない」という。ちなみに、東大医学部でも臨床系では女性教授はいない。

国民の視点に立てば、女性医師はどこで働いてもらってもいい。彼女たちが育児と両立しやすい職場に移ればいい。象牙の塔を離れ、市中で診療してくるのは、むしろ有り難いことだ。

彼女たちが大学病院を辞めて困るのは、大学経営者たちだ。医学部経営者が本当に恐れるのは、大学の肩書きを医師たちがありがたがらなくなることだ。市中病院と医師争奪戦をすることになれば、人件費は高騰する。だからこそ、「女性は使えない」ことになり、女性入学者を制限しようとしたのではなかろうか。