ターゲットを絞り込む、とは、講演会場を暗闇から明るい場へと変えていく、ということです。そうすれば、目の前に座っているターゲットに合わせて、「面白い」話をしていくことができます。

大事なことは、「誰にとって面白いのか」をはっきりさせること。漠然とした「面白い」に気を付けることです。それこそ、「面白い」という言葉が出てきたときには、慎重にならないといけません。誰にとっての「面白さ」なのか、です。

あまりに当たり前に使われる言葉だからこそ、気を付けないといけない。「面白い」には謙虚にならないといけないのです。

企画を自分目線に落とし込む

企画を考えるときに、ターゲットに頭を向けるなんて面倒だなぁ、と思われるかもしれません。とにかく面白いものを考えればいいじゃないか、と。

もちろん、それができて周囲からも高く評価されているのであれば、まったく問題はないでしょう。

ただ、そうでない人、企画に苦しんでいる人には、ターゲットに、しかもできるだけセグメントしたターゲットに頭を向けたほうがいいですよ、と私は申し上げています。それはなぜかというと、企画をしやすいから。セグメントされたターゲットに訴求しやすいから。

もっというと、「自分目線」にも持っていきやすいからです。ターゲットを絞り込むとき、ターゲットを想像することが大切になるわけですが、ターゲットを想像するといっても限界があります。そこで生きてくるのが「自分目線」です。自分もターゲットの一人として、「課題」に向き合ってみるのです。

実際、自分自身もターゲットに組み入れられる、という企画は少なくありません。今の自分のみならず、過去の自分も含めて、です。

ターゲットを絞り込むと
  
自分目線に落とし込みやすくなる

あの大ヒットシューズ「瞬足」開発の裏側

かつて取材した大ヒットプロジェクトに、アキレスの「瞬足(しゅんそく)」があります。「年間150万足売れれば大ヒット」といわれる業界で、年間600万足を記録した商品です。2003年のデビューから、累計で5000万足を突破。文字通りの超メガヒット商品です。

この商品はどのようにして生まれたのか。ただ漠然と子どもたちを意識して「面白い靴」を求めたことで、生まれたわけではまったくありませんでした。ターゲットをセグメントし、子どもたちの「課題」にしっかり目を向けたからこそ、生まれた靴だったのです。