会社を買収した後は、現場社員の話に耳を傾けて、よりよい改善に向けてのディスカッションをします。すると、自ずと組織は業務改善の方向に進んでいきます。実際、私たち投資ファンドが入ると、社員のみなさんも、経営が変わった=自分の意見を聞いてもらえるかもしれない、と感じることから、会議中であったり、直接のメールであったり、お茶をしているふとした瞬間に、改善のアイデアを出してくれることが多くあります。こういった現場をわかっている社員の業務改善のアイデアが、経営全体の改善につながっていくのです。
人生100年、65歳で引退では資金が足りない
ここまで読み進めてくださったあなたにはきっと、ゼロイチの起業は難易度が高いものの、中小企業の改善はこれまでのビジネス経験の延長線上にあり、できないことはないかも……と感じていただけたのではないでしょうか。
私は、ゼロイチを作っていこうとする企業に投資する「ベンチャー投資(ベンチャーキャピタル)」と、すでに事業ができあがっている会社に投資する「バイアウト投資(バイアウトファンド)」の、両方のファンド投資を経験しています。その中で、“千三つ”の世界で、伸るか反るかの投資をするベンチャーキャピタルよりも、投資先のキャッシュフローが回っているバイアウト投資のほうが、はるかに手堅い投資だと気づきました。だからこそ私は、ベンチャーキャピタルではなく、バイアウトファンドを立ち上げたのです。
「なるほど、自分は中小企業の経営はできるのかもしれない。しかし、大変だろうし、苦労もするだろう。起業ほどではないにせよ、倒産のリスクもある。はたして、それだけのメリットはあるのだろうか?」
そんな考えが頭をよぎった方には、もう一度本書の序章を読み返していただきたいと思います。
人生100年を夫婦で豊かに幸せに過ごすためには、60歳で定年、再雇用を経て65歳で引退という道をたどっているのでは、明らかに資金が足りない、と書きました。
老後の「資産形成」という観点からも考えてみましょう。会社を買うことで、あなたの老後の収入にはふたつの大きな変化が生まれます。