ギフト需要は「これ、一体なんだよ」で売れる

【高橋】本はどうなんですか?

【佐渡島】本というメディアの問題は余白が少ないことなんですよ。例外はあります。ユニクロの柳井正さんの『経営者になるためのノート』は、余白が広く取ってあって、ノートのように書き込める。自分が書き込むことで、はじめて完成する本なんです。

本に限らず、今までのコンテンツは完成品としての精度が重要でした。しかしインターネットが普及して以降、完成品の精度はほとんど意味を失いました。もう少し時間がたてば、精度の高い完成品なんて、スキャンして3Dプリンタから出力してしまえばすぐ手に入ってしまう。そうなると、本にせよ玩具にせよ、コンテンツそのものより、それに対して自分はどう考えたか、どう反応したか、どう使ったかが重要になります。

「ギフト需要」が典型的です。「これ、一体なんだよ」「なんで買ったんだよ」とそのタイミングで口コミが起きるから売れるんですよね。大事なことは、その商品がコミュニケーションの仲介役になれるかどうかなんです。

「少年ジャンプ」が強かった理由

【高橋】マンガ作品における余白とは、どういったものでしょう。

【佐渡島】「少年ジャンプ」の作品は二次創作がいっぱいあるじゃないですか。なぜかというと、ジャンプ作品は無理やり人気を取っていかないと生き残れないから、話の展開を早くしたり、はしょったりして、物語に齟齬(そご)が起きる。その齟齬を埋めるために二次創作がいっぱい生まれるんです。

【高橋】余白を埋めるための二次創作というわけですね。僕、「ジャンプ」のマンガだと『キン肉マン』が大好きなんですけど、あれも余白ありまくりの話でした。

【佐渡島】それに対して「モーニング」の『宇宙兄弟』って、これ以外に楽しむ方法がない。はしょらず、描ききっているから。

【高橋】たしかに、『ドラゴンボール』の展開は荒唐無稽でも楽しめますけど、『宇宙兄弟』で適当に宇宙に行かれたら、たまったもんじゃない。

【佐渡島】そうなんです。「実はこんなことが裏でありました、ちゃんちゃん」みたいには作りづらい設計なんですよ。