砂漠を大経済都市に変えた海外の成功事例
実は海外では、このような試みはすでに多く行われている。
アラブ首長国連邦(UAE)にはマスダールシティという、砂漠の真ん中に突如として現れた実験都市がある。これは、ゼロエミッション・シティ(廃棄物の出ない街)を標榜し、地域内のエネルギーを循環のみで持続可能な街を建設するという挑戦的な試みだ。
中東の石油依存の構造を考えれば、石油を燃やさずに持続可能な街が成立することを証明できれば、それは画期的な実験成果だ。現場には、膨大な数の太陽光パネルが設置され、また、風通しを考えた建物の設計をすることにより避暑効果を得るなど、環境に配慮した街並みとなっている。
ほかにも中東には、ドバイ、YASアイランド(アブダビ)など、革新的な国策開発プロジェクトが多くある。例えば、ドバイでは、巨額の石油マネーで砂漠を新規開発し、まったく何もない場所から中東地域のハブとなる大型都市を作り上げた。すべての施設は「世界最大」と「世界最高」にこだわり、世界の人々を魅了するために作られたものだ。その結果、多くの人が住み、毎年、日本のインバウンド外国人の数倍もの観光客が訪れ、商業が活性化することとなった。何もない砂漠を大規模な経済都市に「用途変更」したために、無価値であった砂漠に、東京・港区を超える地価が付くことになったのだ。
ギャンブルの禁止されている首長国ドバイだが、このプロジェクト自体が国の存亡を賭けた大博打(ばくち)だったはずだ。2009年のドバイ・ショックでは、一度、その賭けに負けたともいえる。しかし、最終的には持ち直し、石油の枯渇による経済崩壊を避けることができた。そして、今後は、自ら開発した不動産の大家さんとして、世界中のビジネスパーソンから家賃と施設利用料を徴収して生き続けることとなったのだ。
このビジネスモデルは、「丸の内の大家さん」こと三菱地所グループを見ても分かる通り、非常に手堅く、継続性の約束されたものだ。ドバイは成功を収めたといえよう。
第二のドバイを目指すマレーシアの国境都市
アジアでも各国の挑戦は続いている。マレーシアにはイスカンダル・プロジェクトという壮大な開発計画がある。同プロジェクトではマレーシアとシンガポールの国境都市・ジョホールバルに、シンガポール並みの先進的な都市を創ることをテーマに掲げている。
マレーシアのもくろみはこうだ。現在のマレーシアは、沿岸部の場所貸しと、機器の組み立て、事務作業など低レベル労働の請負でちょっとした外貨を稼いでいる。しかし、この労働集約型ビジネスモデルには限界を感じており、石油や森林資源が豊富にあるうちに、コンテンツやメディアなど、知識集約型産業に経済構造の転換を図りたい。そのために、映画の撮影スタジオなど知的産業系の施設を政府の肝いりで建設した。外資も説得して、レゴランド、サンリオ・ハローキティタウンなどを誘致した。