居酒屋以外の業態の開拓も進んでいる。ワタミが期待を寄せるのが新業態「カタマリ肉ステーキ&サラダバー にくスタ」だ。ステーキやハンバーグなどの料理を提供するレストランで、16年10月に1号店をオープン。現在東京に3店を展開している。

「いきなり!ステーキ」を筆頭に、ステーキやハンバーグを扱う飲食店はいま勢いがある。「いきなり!ステーキ」はペッパーフードサービスが運営する立ち食い形式のステーキ店として13年12月に誕生し、わずか4年ほどで214店(18年2月時点)の店舗網を構築している。ワタミの「にくスタ」は立ち食い形式ではないが、同じステーキを扱う店として大きく成長する可能性があるといえるだろう。

こうしてみると、ワタミは鳥貴族や「いきなり!ステーキ」といった勢いがある業態店を模倣・追随する形で、業績を回復させていると考えることができる。飲食業界では常套手段ではあるが、今のところそれが功を奏しているといえそうだ。

新商品投入で宅食事業も復調傾向

宅食事業の復活も見逃せない。ワタミは弁当などを宅配する事業を手掛けているが、近年は売上高が減少し続けていた。14年3月期には売上高が428億円あったが、17年3月期には16.1%減って359億円にまで減少している。しかし、18年3月期第3四半期(17年4~12月期)は前年同期比で2.7%増えているのだ(291億円)。

ワタミの宅食は配達人による手渡しを基本とし、顧客とコミュニケーションを取りながら宅配してきた。きめ細かいサービスが好評で高齢者を中心に支持を集めてきたが、競合の参入で競争が激化。セブン-イレブンは宅配サービス「セブンミール」を強化しているし、吉野家やマクドナルドも宅配に本格参入するなど、外食大手が軒並み宅配に力を入れている。また、ネットスーパーを利用して弁当を注文する人も増えている状況だ。これらが売上高に影響していたが、17年度の上期は高齢者をメインターゲットとした弁当や栄養バランスを売りにした弁当を新たに投入し、好調に推移した。

ワタミは当面の低迷からは脱しつつあるが、予断は許さない。国内外食事業と宅食事業の売上高は回復の兆しが見えるが、海外外食事業は減収が続いているためだ。

また、ワタミという企業全体に対して、世間の目はまだまだ厳しい。創業者の渡邉美樹参院議員(自民党)は、3月13日の参院予算委員会で、過労死遺族に対し「お話を聞いていますと、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえてきます」と質問。遺族から抗議を受け、16日に謝罪している。

国内外食事業と宅食事業も、この先どう転ぶかわからない。完全復活と呼ぶにはもう少し時間が必要だろう。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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