ケタ違いの発想の大きさに驚く

当社が中国事業に着手したのは約20年前です。カレーレストランの展開やレトルトカレーの輸出を通じて、中国にはカレーを受け入れる市場が存在すると手ごたえを感じました。2005年からはルウカレーを投入し、本格的な中国市場開拓に乗り出しました。

現地でのスローガンは「カレーライスを中国人民食に」というもの。「可能性があるから見に来てほしい」と言われ、私も2~3カ月に1回は中国を訪れました。小売店の店頭販売を見に行くと、目の前で2個3個とまとめて買って帰る人もいて、1日で何百個という異常値が生まれていく。中国市場の大きな可能性を感じました。

この勢いを見て、ここを変曲点にしなければいけないという強い思いを持ったものです。中国で新しい食文化を創造するのですから、時間も投資もかかります。このとき、会社全体でその覚悟を決めることができたことが、これからの発展につながって行くと思います。

中国に出て驚いたのが発想の大きさです。私たちが事業規模を50億円で考えているところ、中国の人たちは500億円で考えています。中国人の考える規模、スピードに負けないようにしなければなりません。

「わかやま未来会議」の講演の様子。

カレー普及のカギは幼少期の感動体験

中国事業では家庭用、業務用、レストランの3分野でバランスよく伸ばしていきたいと思っています。カレーの味は変えるべきところと、変えてはいけないところを明確にしました。中国人が好む八角をプラスしたり、日本よりも黄色くしたりといった面は変えた部分です。

色について、日本人は茶色のほうがおいしいと感じますが、中国人は黄色のほうがおいしいと言います。実は昔、日本のルウカレーも黄色だったのですが、年々茶色に変わっていきました。

変えていないところは、ライスにかけてとろみを感じ、具がしっかりと入っていて子どもが食べられる味、というバーモントカレーの基本部分です。

中国市場にカレーが根付くために一番大切なのは、幼少期からのアプローチだと考えています。子どものころにカレーを「おいしい!」と思った感動体験が、成長してからも食卓のメニューにカレーを選択する行動につながります。ですから学校の工場見学の受け入れ等も、積極的に行っていきたいと思っています。

この中国でのカレー事業もそうですが、ビジネスマンにとって「リーダーシップ」と「コミュニケーション」の力をつけることが重要です。そのためには、しっかりと相手を理解するとともに、自分を知ることがそのベースとなります。若い人たちにはそういう力を付けて「仕事をして」ほしいと思います。

広浦康勝(ひろうら・やすかつ)
ハウス食品グループ本社 専務取締役
1955年、和歌山県生まれ。78年、ハウス食品入社。生産部門(工場、生産統轄室)を経て93年、マーケティング部門へ異動。2002年、調味食品部長、04年、執行役員、06年、取締役マーケティング本部長。13年ハウス食品グループ本社株式会社 専務取締役。16年より専務取締役 R&D統括、国際事業本部・品質保証部担当。
(構成=Top Communication 撮影=向井 渉)
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