「どんな判決でも従います。酒もタバコもやめます」

8年前、東京地裁で傍聴したこの中年男の裁判。酒が強いと自負しており、酔っている自覚もなかったと被告人は言うが、弁護人によると、被告人には酒乱の傾向があり、酔うと人が変わってしまうという。従業員の態度を横柄に感じたというような、些細な理由で怒りの導火線に火がついた。ビジネスパートナーの目の前で暴力を振るうなど、少しでも冷静さが残っていたらできることではない。

「本当にひどいことをしました。どんな判決が出ても従います」

被告人はしおらしく反省した。初犯だし、執行猶予がつくのは確実。気になるのは、同じことを繰り返す可能性だ。

*写真はイメージです

この事件で、ビジネスパートナーは手を引いてしまった。事業計画は振り出しに戻ったが、資金がなくなったわけではないし、まだ挽回可能。しかしその酒癖は将来もトラブルの種になりそうだ。裁判長に「酒癖の悪さを解消する手段はあるのか」と問われた被告人は、こう答えた。

「はい、酒をやめます。勾留されている2カ月間、酒もタバコもやっていないので、これを機にどちらもやめます! 酒さえ飲まなければ自分は……。必ずやめると誓います!」

出たよ、禁酒宣言。

▼刑を軽くしたい被告人は「禁酒宣言」するが、また飲む

判決を軽くしたい被告人は、ほぼ共通して「禁酒宣言」をする。だが法廷にいる全員は「必ずまた飲むな」との印象を抱く。そこには、どうしたら飲まずにいられるかという具体的な対策が皆無だからだ。きっぱり酒をやめられればいいが、そうでない場合には、また理由もなく大暴れしてしまいかねないことを法曹関係者なら嫌になるほど知っている。

別の暴行事件では、60代の元職人が被告人だった。昼休みから酒を飲み始め、日本酒5合を飲んだところで、ツマミを買いに出かけた。その途中、すれ違った通行人にコップを投げ、そのことを注意した相手を追いかけて引き倒し、頭から酒をかけた。