教育の質確保など当然のことだ

読売社説は愛媛県と今治市による最大96億円という補助金に触れた後、こう主張する。

「地元出身者の入学枠などを有効に機能させて、獣医師の偏在を解消することが大切である」

そうだろうか。地元出身者の入学枠を単に増やしただけでは偏在は解消されない。遍在を解消するためには、学生に対し、卒業後の一定期間を地元で獣医師として仕事をするように義務付けなければならない。それには自治医科大のように入学金や授業料を免除する必要があるはずだ。

なぜ、読売社説は「有効に機能させて」と書くだけで、具体的なやり方を示さないのか。

さらに読売社説は「獣医学部の新設は、獣医師の過剰を招くとして、1966年を最後に認められなかった。規制改革を進める国家戦略特区諮問会議が今年1月、今治市への設置を認め、加計学園が事業者に選ばれた」と過去の経緯を説明し、次のようにも指摘する。

読売は肝心なことを避けている

「地域のニーズに応えるためには、質の高い教育を安定的に行う体制整備が欠かせない。審査が専門的、学術的な観点から厳格に行われたのは当然だと言えよう」

見出しはここから取ったのだろう。しかし、質の高い教育の確保など当然のことだ。新聞の社説であらためて訴えるべき内容だろうか。

審査が厳格に実施されるのも当たり前であり、これもあらためて強調する必要はない。

さらには「文科省は開学後も、適切な運営が行われているかどうか、しっかりとチェックすべきだ」とも主張するが、これも当然のことである。

どうして読売社説は、当然のことばかりを繰り返して主張するのだろうか。それは主張すべき肝心なことを避けているからではないか。

そう考えながら読み進めていくと、これまで問題になってきたあの加計疑惑にやっと触れ、それを否定するような形で筆を運んでいくから驚かされる。

「国家戦略特区の選定を巡っては、学園理事長と安倍首相が友人であることから、『加計ありきだ』と野党が追及した。首相は疑惑を一貫して否定した。実際、直接の関与を裏付ける証拠はない。野党は、特別国会でもこの問題の経緯を追及する構えだが、建設的議論になるのだろうか」

読売社説が「直接の関与を裏付ける証拠はない」「建設的議論になるのだろうか」とまで書く根拠とは、いったいどこにあるのだろうか。社説のなかで明記すべきだろう。

そして最後は「問題なのは、特区選定に関する省庁間調整や政府関係者と学園側の接触の記録が適切に保存されていないことだ」と行政文書の保存問題に話をすり替えている。