スローコミュニケーションに変える「3つのF」

意図しない炎上が起きる理由のひとつには、即返信、即回答が求められる中で、既読スルーを避けるために即座に絵文字を送るといった、「ファストコミュニケーション」も背景にあります。

この「ファストコミュニケーション」の流れにのまれないために必要なこと、それは、日々押し寄せる情報や事柄と向き合う「間」を意識的にもつことだと思います。「あえて」一拍おく余裕ともいえるでしょう。

私の場合は、「3つのF」の視点で「言う」「黙る」「伝える」のいずれにするかを考えるようにしています。

まず、自分の見方や解釈には、何らかの偏見や癖があることを自覚する。そして、「それは本当のことなのか?」「他の見方はないのか?」と一度踏みとどまり、確認する。この、「一瞬の間」をもつために軸となる視点です。

(1)Fact:ファクト(事実 = 出来事、情報、事柄、行動、現象など)
 ひとつの事柄や情報、出来事を、感情を排除してとらえる

(2)Feeling:フィーリング(感情 = 感想、感覚、印象、解釈、意見など)
 それに対して、自分にはどんな感想や意見があるのか、また、他の人や集団にはどんな感想や意見があるのか、に想いを馳せる

(3)Future:フューチャー(未来 = 将来像、期待、先行きの予想など)
 ファクトとフィーリングをふまえて、言うのか言わないのか?あるいは、何をどのように伝えるのか、を考える

例えば、「降水確率が高い」というファクトについて、「遠足なのに残念だ」(フィーリング1)と思う人もいれば、恵みの雨を待ちこがれた農家の人は「嬉しい」(フィーリング2)と感じるかもしれません。「雨が降る」ということは全ての人に“悪い”とは限らない、ということを前提に、気象予報士は、「天気が悪い」とは言わない(フューチャー)のだそうです。

この3つFの視点は、日常の対面の場でも活用できます。

例えば、「子どもがテストで50点を取ってきた」(ファクト)とします。それに対して、「嬉しく思った」のか「怒りがこみあげてきた」のか?また、子ども自身は、この点数をどう捉えているのか?(フィーリング)を考えます。

それらを踏まえながら、「今後にむけて、子どもにどのような言葉をかけると良いのか?」(フューチャー)を決めます。

ひとつの情報や現象をこの3つのFの視点で考えることで、「事実」と「意見」「他人の説を元にした自分の考え」の混在がなくなるという利点もあります。

独りよがりでない、複数の視点での検証、意見や思想の異なる人たちの立場に立って考え方や捉え方を考慮すること、その情報を発信することで、未来、そして周囲の関係者へのどのような影響を及ぼすかまでを考える時間をもつことができます。

「言う」「黙る」「伝える」の選択肢を一瞬考えるための「間」をもつことで、意図しない炎上リスクは大幅に削減できるのではないでしょうか。

大谷恵(おおたに・けい)コーチ・エィ 広報スペシャリスト
上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。商社、国際博覧会事務局、アーティストの個人事務所、輸入車メーカーなどを経て、2006年、日本を代表するエグゼクティブ・コーチング・ファーム、株式会社コーチ・エィに広報のプロフェッショナルとして入社。テレビ、新聞、雑誌、ウェブ媒体などに「システミック・コーチング」の情報を露出する他、19万人の読者をもつコーチ・エィ発行のメールマガジン「WEEKLY GLOBAL COACH」のコラム編集、広報誌発行、書籍出版企画などを行う。エグゼクティブコーチによる人気コラム「Coach's VIEW」の編集を、10年にわたり担当。コーチとしては、企業や医療、出版、教育などの分野で活躍するリーダー層にコーチングを行う。
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