次に少々砕けても大丈夫なスピーチの場合です。英語圏ではやはりジョークから入るケースも多いですね。私の場合はTPOを踏まえながら、最初に身近な話題や皆が笑えるエピソードを加えるようにしています。皆で一斉にドッと笑い、共感が生まれる。最後まで話を聞いてもらえる秘訣はこんなところにもあります。

あるいは最後の締め方でその会場の一体感を演出する方法もあります。たとえば元気なイメージを打ち出したければあっさりと話を終えるのではなく、「さあ、みんなで〇〇していこうじゃありませんか!」と場を盛り上げる締め方をします。スピーチの原則その2は、「ユーモアや身近な話題でフックをつくり、共感を巻き起こすこと」と言えるでしょう。

3番目のスピーチの原則は「視覚情報の重要性を意識すること」。

私は話し方の基礎をテレビのキャスター時代に学びました。特にアシスタントキャスターを務めた「竹村健一の世相講談」という番組では、評論家の竹村健一氏に徹底的に鍛えられました。また、竹村氏が著書の翻訳を数多く手がけた、マーシャル・マクルーハン氏の『メディア論』も参考に、「話す」ことが人に与える影響や、テレビや新聞、あるいはリアルな演説が人々の感覚に与える違いについても学びました。

テレビのニュース番組や討論番組などを見ていると、内容はともかく、まず話し手の外見が気になるものです。髪の毛が立っている、ネクタイが曲がっている、そもそも服装の趣味が変、妙な癖があるなど、そちらにばかり意識が行ってしまうのです。

実は人間は人の話を聞いているとき、言語情報(話の内容など)はわずか7%しか受け取っておらず、むしろ聴覚情報(声のトーンや話し方など)を38%、視覚情報(外見など)を55%も受け取っていると言われています。これを「メラビアンの法則」と言いますが、スピーチをするときは、自分の想像以上に、聴衆は話の内容以外の要素に意識が引っ張られているということを理解しておくべきでしょう。服装や話し方の癖、身振りなどを研究するのもいいかもしれません。