しかし、当時と今とは政治状況が違う。竹下内閣のころ、衆院では1つの選挙区で3~5人が当選する中選挙区制で、各選挙区に2、3人の自民党議員がいた。しかも自民党は派閥全盛で、党内抗争が激しかった。だから、竹下内閣の時は、自民党支持でも、宮沢喜一氏や渡辺美智雄氏を次の首相にしたいと思う人は内閣を「支持しない」と答えることが多かった。宮沢派、渡辺派議員の後援者たちも「支持しない」と答えるのが当たり前だった。だから内閣の支持は低く抑えられる傾向があった。
ところが今、選挙制度は小選挙区制になり、派閥も弱体化した。自民党を支持する人は基本的には内閣を支持する。つまり、昭和時代は内閣支持率は低くて当然。今は高くて当然なのだ。だからこそ今の「30%台前半」は深刻だ。
安心材料は野党支持の低迷
安倍政権にとって厳しいデータばかり指摘してきたが、最後に「安心材料」も書いておきたい。内閣の支持が落ちているにもかかわらず、野党第1党・民進党の支持が高まらない。冒頭紹介した4種類の調査ではいずれも、民進党は前回よりも支持を落としており、10%未満にとどまっている。
都議選では、小池百合子都知事が率いる「都民ファースト」が自民党批判層の受け皿になった。国政では民進党が中心になり野党共闘を目指しているが、遅々として進まない。
安倍首相にとっては、自分たちの支持が下がっても、野党の支持が上がり始めなければ、モラトリアム期間を与えられることになる。
衆院選は、来年末の任期満了近くになる可能性が高まってきている。それまでに安倍内閣が求心力を回復するか。民進党もしくは他の勢力が国政で「受け皿」をつくりあげるか。もちろん、その前に安倍首相が退陣する可能性もないわけではない。「安倍1強」は遠くになりにけり、である。