付せん紙に「未来の姿」を書き出してみる
【丹羽】手造りへのこだわりによって生まれた高い認知、一方で、大量生産による売上増加という安易な選択は取れないという制約があります。一ノ蔵では六次産業化にも取り組まれていて(http://www.ichinokura.co.jp/rokujisangyou.html)、原料の米の生産にも力を入れていますね。こういった要素をどのように組み合わせていくのか、鈴木さんの中でイメージができると良いと思います。
まずは、この付せん紙に10年後(2027年)のイメージを、以下の項目について書いていってみてください。「○○がこうなっている」など、状態を表すような形でお願いします。「売上比率が〇%」といった具合に定量的な書き方でも、「笑顔の社員が増えている」といった定性的な書き方でも構いません。書けるところから、書いてみてください。
* 会社全体
* 商品・サービス
* 市場・お客さま
* 社員
* 世の中
* 自分自身
(※10分ほどかけて、付せん紙に記入していく)
【鈴木】書けました。
【丹羽】ありがとうございます。一つずつ見ていきましょう。
【丹羽】記入お疲れさまでした。「自分自身」のところに「副会長」というものがありますが、これは……?
【鈴木】僕の前任の社長が、現在副会長なんです。会長でもなく、副会長というのがちょっとうらやましくて(笑)。
【丹羽】なるほど(笑)。
ブロックから見える「未来のイメージ」
【丹羽】それでは次に、こちらのブロックを、2027年をイメージしながら、思うままに組み立ててみてください。
【鈴木】色とか形は考えながら、ですか?
【丹羽】後からで大丈夫ですが、例えば「この色や形はヒトを表している」といった具合に話してくださると有り難いです。ただ、今はあまり考えすぎず、手を動かしながらイメージを膨らませていただければと思います。設計図を持たずに、手に聞きながら……。
【鈴木】わかりました……やってみましょう。
(※10分ほど組み立てる時間)
【丹羽】ありがとうございます。できましたね!
【鈴木】なんとなく、ではありますが、この白いのが会社……ベースの緑色が田んぼですかね。一ノ蔵は原料の米の生産、六次産業化にも取り組んでいますので。農業部門があって、茶色いところは土があって……、という感じですかね。黄色のところは出荷やその商品という感じでしょうか。白くて大きな建物が……これはやはり蔵ですね。赤もそこに置いたのは……、一ノ蔵のブランドカラーだからかな。ブロックを置きながら、「もう少し置きたい」という気持ちでしたね。
【丹羽】鈴木さん、一度椅子から立って、少しブロックから離れてみていただけますか? そして「2027年について、このブロックが自分よりもよく『知っている』」という気持ちで、改めて全体像を眺めてみてください。
【鈴木】なるほど……(椅子から立つ)。蔵からお酒ができて、それが出荷されていく。黄色が出荷される商品というイメージなのでしょうね。ブロックの中でも占める割合が大きい。でも、先ほど、付せん紙には農業部門の黒字化、というのを書いたのですが、この茶色い土やそこから生まれる黄緑の作物……が、意外と大きくなっているんだな、と気付きました。もしかすると、茶色が米で、黄緑が漬物かもしれませんが(笑)。
【丹羽】一次生産物と加工品ということかもしれませんね。
【鈴木】そうですね……ブロックを眺めたときに、この黄緑のあたりに目が引き寄せられたんです。僕の割りと深いところで、田んぼや農業のことが、すごく気になっているのかもしれないですね……。
【丹羽】そこは重要なポイントですね。この青は?
【鈴木】これは……ええと、なんだろう……ああ、「海」ですね、海外ですね。
【丹羽】おお、なるほど!
【鈴木】これ、面白いですね。面白いです。自分でも意識してないことが現れますね。これ、写真を撮ってもいいですか?
【丹羽】もちろんです。写真といわず、ぜひお持ち帰りください。
【鈴木】青が海外か……海外の売上比率が、一ノ蔵は他のメーカーさんに比べると少ないんです。いま主だったメーカーでは、海外の売上が1割くらいになっているのですが、うちはまだ1%未満なんです。
【丹羽】そうなんですね。
【鈴木】ですから、1割くらいに海外比率を上げていきたい。ブロックに占める大きさにも、なんだか、そういう気持ちが表れているような気がします。