【原理原則とは「偉大なる常識」である】
『列子』の中には有名な問答があります。
楚の荘王がひとりの賢人に、国を治めるにはどうすればいいかを聞くと、賢人は身を治めることは知っているが、国の治め方は知らないと答えます。「国を守る方法を学びたい」と重ねて問う荘王に、賢人は次のように答えます。
「君主が身治まって、国乱れたものを聞いたことがありません。また、身乱れて国が治まったことも聞いたことがありません。もとは身にあります」
つまり、上に立つ者が身辺清浄で正しければ、ことさら命令などしなくても、すべて上の思うように実行される。しかし、その身が正しくなければ、いくら命令しても部下たちは従わない。その結果、国は乱れ国家滅亡の危機に瀕することになります。これこそが、いかなる時代・場所でも通用する原理原則ですが、これをきちんと理解し実践できる人間は、意外に少ないものです。だからこそ「偉大なる常識」といわれているのです。
【当たり前のことを当たり前に】
竹内実の著書『毛沢東の生涯』に、毛沢東が人民軍にたたき込んだ「三大規律」と「注意八項」について書かれています。以下に示します。
“三大規律”
一、一切の行動は指揮に従う。
二、大衆から釘一本、糸一筋もとらない。
三、鹵獲(ろかく)品=戦利品はすべて公のものとする。
“注意八項”
一、話はおだやかに。
二、買物の支払いは公正に。
三、物を借りたら返す。
四、物をこわしたら弁償する。
五、人をなぐったり、どなったりしない。
六、農作物を荒らさない。
七、婦人をからかわない。
八、捕虜をいじめない。
以上、すべて常識的なことですが、殺気だった戦場では、守ることが難しいといいます。毛沢東がいかに「愛される人民軍」つくるのに苦労したかがわかります。
※本連載は『帝王学がやさしく学べるノート』からの抜粋に、修正・補足を加えたものです。