わざとボケて、相手に突っ込ませて懐に飛び込む

雑味とは、本来、料理の味を損なってしまう不純物である。だが、これを全部取りきってしまうと、うま味成分もなくなってしまう。たとえば、鍋などで出てくる灰汁は、雑味成分である。しかしそれをすべて取ってしまうと、本来のうま味成分も取り払ってしまうことになり、味は落ちる。それゆえ、雑味部分を完全に取りきるよりも、微妙に残しておいておいた方が、料理がおいしくなるというわけだ。

その点、詐欺文書には、雑味成分がところどころに含まれている。

※写真はイメージです

本来のビジネス文書には、ありえない、かわいいポストイットを貼ってあったり、新入女性社員の初めての企画ゆえのつたない文面になっていたりする。だが、それを見ても不快さを感じない。それどころが、「自分にもこうしたように初めてプロジェクトを任されたことがあったな」と、思い出にひたる人もいるのではないだろうか。十分な校正がなされていないところも、むしろ初々しさ感を醸し出している。

雑な部分が見え隠れしているゆえに、微笑ましい作りになっているのだ。そこへ、かわいらしい女性社員が「カンパをお願いします」「社長に内緒で」といわれると、「おお、そうか」となってしまう人も現れることになる。

仕事においても、あえて完璧にし過ぎないことも大事な場合もある。特に、相手が年上ならば、少々の隙を作り、「君、こうしたほうがよいよ」と、つっこまれる部分を意図的に残す戦略はありだろう。その指摘に「ありがとうございます!」と即座に返せば、かわいい奴だな、との印象を持ってくれる可能性もある。もちろん、こいつアホかとの評価を下されるリスクもあるが、得てして、相手の懐に飛び込むのがうまい人にはこうした雑味な部分(人間味)を持つ人が多いものだ。

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