「一つの文章として成り立つことが大前提ですが、ダジャレと同音異義語がどう違うのかが出発点。ダジャレは同音異義語と違い、100%同じ発音ではダメ。似た発音で、しかも異なる品詞であることが求められます。名詞を2つ並べただけではダジャレにはならない。『このゲレンデでは、サッカーボールは蹴れんで』のように、名詞を後半の動詞・終助詞でオトすという組み合わせがダジャレの基本です」

類似音が2つ3つ連なるこのタイプを併置型と呼ぶ。これとは別に、「甘えん坊将軍」(暴れん坊将軍)のような、ある言葉に別の似た言葉が重なる(しかも意味に落差のある)タイプが重畳型である。

構造がわかれば、後は無限ともいえる言葉の組み合わせのどれをピックアップするかにかかっている。そこでモノをいうのは、語彙の豊富さと処理のスピードだという。

「ハードディスクの容量がどんどん大きくなると、似た発音の組み合わせのパターンも増える。処理のスピードが速ければ、正しく伝えられ、かつダジャレになっている言葉が迅速に発見できる。コンピュータの進歩と同じことです」

実はこの条件、先のデーブ氏にそっくりそのまま当てはまるのだ。

何せ1日に新聞を20紙、テレビ番組を同時に4つチェック。5台持ち歩くスマートフォンには、数時間放っておくと留守電約60本、メール約200通が入っているという。凄まじいばかりの情報の出し入れだ。何と、まだ未発表の膨大なクールギャグがストックされたままだという。


デーブ氏の“書く”ダジャレは、会話では通じにくい漢字熟語でレパートリーを拡大。30万人超を和ませる“ダジャレ復権”の牙城だ。

「結婚して2、3年目の頃は、潰してバラバラになった日本語の辞書を輪ゴムでとめていた」(京子氏)

今も日本語を覚える努力を継続中だ。ボロボロのネタ帳・漢字帳は知る人ぞ知る。事務所のスタッフにも四六時中「この言葉、どういう意味だっけ?」と電話がかかってくる。左利きのデーブ氏は、手元にメモ帳がないときは箱ごと購入する青ボールペンで右の手のひらにメモする。手の甲、手首……と徐々に上昇し、右腕が真っ青になることもあるとか。

「テレビに出るときは洗い落としますが、いつ寝ているのかわからない。『とにかく寝て』といっても、『寝るのは死んでからでもできる』。何十年も切らせたことのないユンケルは、1日2本から1本に減らさせました」(同)


“クールギャグ”事例集

滝澤氏は、「ダジャレをいえる人は言葉が豊かな人、普段から言葉としっかり向き合っている人です。デーブさんはまさにそうなんですね」という。ただ、デーブ氏のツイートが広く受け容れられる理由は、必ずしもそれだけではない。

スペクター社の倉田暁雄氏は、「ロケの本番じゃなくても、スタッフや運転手の皆さんにずうっとジョークをいい続けてます。サービス精神ですね。ギャグをいった後で『ね、ね、面白かった?』と目がキョロキョロ探してる横顔はチャーミングです(笑)」。京子氏も、「震災に関するツイートは本人も悩んだと思いますが、他人を傷つけるものは皆無です。ウケるウケないではなくて、どんな状況でもクールギャグを忘れない。普段も同様で、大げさにいえば100のうち1つ、誰かがクスッと笑ってくれれば、という気持ちが根本にあります」という。

日本の中高年男には、「嫌われたくない」などという怯懦(きょうだ)の心を蹴散らす精神と体力が必要なのだ。