対象となる期間は2006年3月期までの2年間で、ホンダは総額約1400億円の申告漏れを指摘される可能性がある。現在は調査段階で、結論が出るまでには時間がかかろう。しかし、ホンダは追徴課税を覚悟したのか、08年3月期決算で約800億円を引き当てている。
ここで疑問が1つ。技術指導料や特許料の適正価格なんて、誰が、どう決めるのか。同じモノを別の会社と取引した事例があればそれを参考にできる。でも、無形のサービスについて価格を設定するのは困難といわざるをえない。さりとて、ホンダが設定した技術指導料などの価格が正当であるとする論拠の提示も、これまた至難の業であろう。
実は企業が重視する原価計算は国税庁にとって大きな意味を持たない。では、どんな論拠を揃えれば国税庁は納得するのかというと、今のところ闇の中。海外進出の際、どのようなデータを揃えればいいのか、事前に当局とのパイプを築きながら確認することが、現段階での最善策としかいえないのだ。
日本の上場企業は07年度まで4年連続で増益を続けてきた。低コスト生産が可能な中国などの新興国で原価を抑えたこともその一因であろう。そうやって日本企業が海外でため込んできた利益は、すでに05年度末で12兆円もあるといわれる。当然、税務当局も目を付ける。
増益という宴のあとに待っていた移転価格税制問題。ホンダの案件はほんの序章にすぎない。「自分はだいじょうぶ」と高をくくっていると、後で大きなしっぺ返しを食うこともありえる。