応答タイミングを早く、発話時間は短く、ゆっくり明瞭に

三宅義和・イーオン社長

【三宅】当社の英会話レッスンでも、あまり教師がしゃべりすぎると生徒がしゃべれません(笑)。

【佐藤】まさしくそれなんです。今、小学校の先生方に小学校英語活動にどう取り組むか、研修をしています。その際、全部英語を使うんだというのではなく、「日本語をまずは減らしてください」と訴えています。日本語を減らすと小学生たちは話す機会が増え、ワンフレーズの英語が出やすくなります。

第3は、やはりお子さんに話しかける時はゆっくりと明瞭に発音することです。これは大変重要だと考えています。実はお母さんの発話を聞いて子どもは真似をしながら音に気づき、音を覚えていく。面白いのは、幼稚園の年中、年長さんに初めて聞いた単語を反復させるのですが、「かがみ」をひっくり返した「みかが」の「が」、すなわち鼻濁音を言える子は、ほとんどいません。たいてい「みかな」と発音します。つまり、お母さんが鼻濁音を発音するのを聞いたことがないからです。

やはり母親が明瞭に話していると、音は聞き取りやすいものですから、子どもの言語獲得も進んで語彙力も高い。ですから、応答タイミングを早く、それから発話の持続時間は短く、そしてゆっくりと明瞭に話しかける。これらの3つが基本なんです。いずれにしても、コミュニケーションの力というのは、英語とか日本語に関係ない共通のものがあります。

【三宅】なるほど、最初から非常に深い話をありがとうございます。我々も教師に「ショート、シンプル、アンド・クリア」を励行してもらっています。

【佐藤】そうそう、それは素晴らしいことです。

【三宅】ほとんどの先生はしゃべりすぎるのです。それに、はやすぎるということもあります。日本人は英語もスピーディーに話すのが上手いと誤解しているようですが、そうじゃなくて、ゆっくりとわかりやすく話すことこそが重要なのです。そのあたりも指導者がそれを実践してくれれば受講する側も学びやすくなります。

【佐藤】先ほどの応答タイミングのところで、発話量の多い親子の会話を聞いていると、応答タイミングがきちっと合っている。例えば、お母様さまが早く返すとお子さんも早く返す。お母さまが、「これ、何かなあ?」とゆっくり聞くと、子どもも「何かなあ……」とゆっくり返す。会話のリズムが一致しているんです。よくコミュニケーションは卓球のラリーのようにと言いますが、上手く行っている親子の会話はボールが行ったり来たりしています。