お馴染みの本が多い印象だが、プロはどう見るか。元高校の国語科教諭で東大でも6年間教えてきた「日本ブッククラブ協会」理事長の有元秀文さんは、次のように印象を話す。

「『かいけつゾロリ』や『ハリー・ポッター』などは、読みやすくてストーリーが楽しい本。読書の面白さに目覚めたきっかけとして印象に残っているのでしょう」

個人指導塾「V‐net」を主宰する松永暢史さんも、今回の本のラインアップについては同じようにストーリーが楽しい本が並んでいるという印象を持ったようだ。

「定番の児童書ですね。東大生も普通の子と同じような本が好きだったことがわかります。『シャーロック・ホームズ』は、僕も子供の頃にむさぼり読んだ記憶があります。『かいけつゾロリ』は、文章の語感もいい。私は国語の学習に音読を取り入れていますが、その教材にも適しています」

プレジデントFamily 2016年秋号「東大生174人の小学生時代 何かに打ち込んでいた子が96%!」

有元さんはアンケート結果を見て、東大生は小学校高学年から中高生のころに読んだ本のレベルが高いのではと推測する。

「東大で教えていたとき、学生の読書レベルの高さに驚きました。司書教諭の講座ということもあるのでしょうが、好きな本を1冊挙げてもらうと理系の子も文系の子もサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』やドストエフスキーの『地下室の手記』といった非常にいい本を挙げてきます。大学入学までの読書体験が豊かと感じました」

有元さんの考えるいい本とは、自分の内面と自分の外の世界、つまり社会について深く考えることができる本。読んで楽しい本は読書が好きになるためのものとしては最適だが、読書習慣がついたらちょっと難しい本を読むことで、豊かな読書体験ができるとアドバイスする。

有元さんが注目したのは星新一さんの本をはじめ長い間読み継がれてきた古典や名作といわれる本だ。

「挙げた人の数は少ないですが、映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作本『チョコレート工場の秘密』やミヒャエル・エンデの『モモ』なども、読みやすいけれど、生きる意味を考えさせる本です」

ためになる本やちょっと難しい本が思い浮かばなければ、図書館の司書に相談するのも手だ。好きなジャンルや読書レベルを伝えれば、その子にあったワンランク上の本を選んでくれるだろう。少し難しそうな本は、大人が読み聞かせをしてやるのもいいそうだ。

(遠藤素子=撮影)
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