D-MOLOは、「オフィスのレイアウトを柔軟に変更したい」という潜在需要にいち早く対応した成功例だ。こういった、顕在化しない需要に気づくためには何をすればいいのだろうか。

「顧客や他業種の人など、自分とは違った立場の人と付き合わなければ、現状認識を変えることはできません。電話やメールだけでなく、直接会ってじっくり話すことが大事です」

こんな向井社長の方針を具現化しているのが、北海道支社の社員が中心となって実現した「ユビキタス協創広場U-cala(ユーカラ)」。もともと、支社ビルの1階にあるショールームにすぎなかったが、IT分野での産官学連携が活発な札幌エリアに「協創」の場を提供すると掲げた。

「お客様だけでなく、『何かあったら内田洋行に相談しよう』という仲間を地域につくることが大切なんです」

07年2月には北海道大学の南極学カリキュラム開設記念イベントに協賛。内田洋行の最新ITオフィス環境を活用し、南極昭和基地の観測隊員とのテレビ生中継などを実現。半年間で3000人の来客を記録した。

商品を提供する売り手としてだけでなく、地域コミュニティーの一員として参加することで、今までにない知的交流が生まれる。「商品を選んで買ってもらう場」という従来のショールームとは全く異なる発想だ。

また、副次効果として、U-calaの利用者が内田洋行の新たな顧客にもなってくれる。北海道支社は、領事館や新聞社など今まで接点のなかった顧客の獲得にも成功。冷え込む北海道経済の中で、前年比120%の売り上げを記録した。