一方、ロスジェネ世代の未来も決してバラ色ではない。この世代は社会人になった瞬間から灰色の人生を歩んでいるから、そうそう甘い夢は見ていないだろうが、これから先は灰色どころか暗闇が待ち構えていると言っても過言ではない。
リーマンショック以降、街中を観察していて奇妙なことに気がつかないだろうか。100年に一度と言われる大不況に見舞われているというのに、明らかに貧しい身なりをしている人を見かけることが少ないのだ。消費が低迷しているとはいうものの、休日のショッピングセンターはそこそこの賑わいを見せている。そして、給与水準が低いはずのロスジェネ世代も、皆こざっぱりとしたビジネススーツに身を包んでいる。
なぜ、こんなことが可能なのかと言えば、彼らの多くが“親がかり”だからである。
ロスジェネ世代の中には、正社員として働いているにもかかわらず、親から仕送りを受けている人もいる。そこまでいかなくても、結婚費用や出産費用を親に出してもらったり、マンション購入の頭金を親に払ってもらったロスジェネ世代は多いはずだ。
図表2を見てほしい。これは、年代別に無貯蓄世帯の割合を調査したデータだが、年齢が下がるに従って無貯蓄世帯が増加していくのがわかる。20代では、恐ろしいことに約3割がまったく貯金を持っていない。
給与水準が低いから仕方ないと言えば仕方ないのだが、彼らが、受け取っている給与以上に贅沢な生活を送ることができるのは、ひとえに日本経済が最も順調だった時代を生きてきた彼らの親世代が、いまだに多額の蓄えを持っているお陰である。ロスジェネ世代は、親の蓄えを――言葉は悪いが――少しずつ引き出しながら、小奇麗な生活を送っているのが実態だ。
だが、こうした状況も、いまや危うくなってきた。まず、リーマンショックによって親世代が持っている有価証券の価値が、ほぼ半値になってしまったという事態がある。不動産価格の下落も周知の通り。
リーマンショックの影響は、当然ながら資産の多くを投資に回していた資産家ほど大きい。実際に資産が半分になって私のところに相談に訪れる人も存在する。ロスジェネ世代の親たちも、多かれ少なかれ資産を減らしたはずである。