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図表2:喫煙による年間生産性損失時間/図表3:喫煙による年間生産性損失額

次に、喫煙者の生産性損失はどうだろうか。喫煙者の年間生産性損失時間は130時間弱に及び、そのうちプレゼンティーイズムが76.5時間を占める(図表2)。金額にすると一人あたり4430ドル(うちプレゼンティーイズムが2619ドル)の損失となる(図表3)。非喫煙者、喫煙経験者と比較して、現在の喫煙者の生産性損失が最も高くなっていることがわかる。

米国では肥満による健康リスクも大きな問題になっている。肥満の労働者は、メタボリック・シンドロームになるリスクが健康な労働者の約9.4倍、高血圧のリスクが4倍にもなることがわかっている。さらに、注目に値するのは肥満労働者の業務遂行障害が2.3倍にもなるという事実である。

ダウ・ケミカルのCEOアンドリュー・リバリス氏は、「我々が使う機械と同様に、社員も十分にケアすれば、有病率が減り、医療費、業務遂行障害、生産量低下によるコスト(=損失)が削減できる」と述べている。

フェニックス市で成功した健康増進プログラム

では、実際にどうすれば社員の健康を促進し、プレゼンティーイズムからくる損失を抑えられるのだろうか?

米国第5位の大都市、アリゾナ州フェニックス市の市職員が取り組んだプログラムを紹介しよう。

プログラムは3つの部分で構成されている。一つは、定期的に取り組む運動。二つ目は、食事習慣を変え、特別な栄養プログラムにすること。三つ目が、禁煙など健康に悪い習慣をなくすこと。

3つの項目のうち、より重要なのは運動と栄養だ。この2つを改善しても不十分な人、つまり、次の段階が必要な人には、薬による治療なども施される。糖尿病の予備軍である人には、血圧を制御するとか、血糖値をコントロールすることもある。また、ライフスタイルを変える、つまり生活習慣を変えるということと、投薬を組み合わせるということも可能だ。薬を与えられた場合、いかに服薬遵守しているのかを調査、管理することも必要となってくる。