「昼飯、おにぎりでええわ」
そんなお二人だから、自分のことにはお金を使いません。豪奢、贅沢が嫌い。以前から生活は質素です。小嶋さんのご自宅もごく普通の大きさだし、岡田さんは現CEOの元也さんと同居してますが、そこも普通よりちょっと大きい程度。豪邸とか別荘とかヨットとか、そういうものは全然縁がないですわ。「昼飯、おにぎりでええわ」と自分で2個買ってくるような人。ストイックといえばそうですが、やっぱりケチなんかなあ(笑)。ほんとに記事になりにくい。地味なんですよ。
でも、気前はいい。たとえば、小嶋さんは国境なき医師団に寄付したりしているし、岡田さんは三重県に設立した公益財団法人岡田文化財団から年に7000万円を文化振興のために使っている。理事長は岡田さんだから、僕らが持っていった助成先の一覧表を見て「これ、少ないやんか。もうちょっとやれや」とか「こんなん100万ではあかんぞ」とか言って自分で200万円に書き直したりする。
ところが、経費の印鑑を貰いにいくと、岡田さんは「東海君、この振込料420円って何や」(笑)。「取りにきてもらえ。ほんならムダに払わんでもええやないか」と。そういえば、岡田さんが自分の財布やカードを出すところ、見たことないなあ。当時は秘書はついてなかったんですが。従業員の前では見せないように何か一線を引かれてたのではないかと思っています。
小嶋さんはというと、ポケットに小銭やお札を直接ガサーッと入れて、切符とかを買うときに無造作に出し入れするもんだから、脇からバラバラと落っこちる。「財布持ったらどうですか」と言っても持たない。ご病気の際にご自宅にうかがった際、家の中を片付けていると、「小嶋さん、こんなとこからお金が出てきた」「あ、そう? そんなところにあった?」。太っ腹なのかケチなのか、だんだんわからんようになる(笑)。
小嶋さんは現在、岡田文化財団に属する美術館、パラミタミュージアムの名誉館長を務めておられますが、昔も今も変わらぬ口癖があります。「あんた、今何の勉強してるの?」「何の本読んでるのや?」「今年の目標、何なん?」。年配の方が訪ねてこられてもそう。で、「そんなつまらん本読んどったらあかんわ」と、自分のカバンから本をガッと出して、「これ面白かったで。ちょっと読んでみ、あんた」と相手に与えたりする。経営者というよりも、理想家肌の先生ですね。ものすごい読書家で、ものを言うときの表現が抽象的・哲学的・示唆的です。女性ならではのきめ細かさに加え、言動に一貫性があって、何でも徹底的に行う。「まあ、このへんでええか」という妥協は絶対に許さない。ダイエーの故中内功さん、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんらチェーンストア経営のそうそうたる面々が集った「ペガサスクラブ」を主宰した故渥美俊一さんも超合理主義者でしたが、「小嶋さんには敵わん」と高く評価しておられたくらいです。
一方の岡田さんは「東海君、これ、こっちやったらどうや?」「こっちのほうが売れるぞ」と、言動は具体的で現実直視型です。ただ、人好きなところは小嶋さんと同じ。めっちゃ人に興味があるから、人を育ててほんとに喜んでいる。グループ会社を辞めた人が外で活躍していると「あいつな、よそでこんなことやってえらい頑張っとるぞ」。で、その人に気軽に「頑張れよ」と声をかけたりする。そういう点でも度量は広いですよ。