また、健康保険と年金の手続きも行わなくてはなりません。

健康保険については、2つの方法があります。一つは市区町村で運営する「国民健康保険」に切り替えること。もう一つはこれまで加入していた健康保険の「任意継続被保険者制度」を活用することです。

後者は、退職後も最長2年間は、今の保険を利用できるもので、健康保険組合に申請して手続きを行います。ただし保険料は、今まで事業主が負担していた分も自分で払うため2倍になります。診察の際の自己負担額は、国民健康保険も任意継続も3割で同じですので、支払う保険料が低額なほうを選べばいいでしょう。

また年金は「国民年金」に切り替える手続きを年金事務所で行いますが、家計が苦しければ条件付きで保険料支払いが免除されるケースもあるので、相談してみるべきでしょう。

このように会社が倒産しても、それに対応した救済制度は多々あります。打つ手を打ち、失業手当が支給される猶予期間を生かして、次の仕事の確保に向けて行動することです。

倒産は、今や大企業だからといって安心ではありません。日本航空や東京電力は、結局国に救済されましたが、その措置には批判も多数寄せられました。おそらく今後は、会社が潰れても従業員の権利を最優先で保護する考え方は、主流ではなくなっていくでしょう。

そうした中でサラリーマンが自分の身を守り、職を確保していくには、護送船団方式の経済政策が否定され、大競争時代に舵を切った現実を見据えることです。会社を離れても通用する市場価値を、自分の中に築いていくよりほかにないでしょう。

厳しい現実ですが、視野を広くもてば必ず活路はあるはずです。海外もその一つでしょう。日本人の勤勉さが美徳として海外にも知れわたり、ネットなどによる情報収集が容易になった今、「起業」か「雇われ」かを問わず、海外進出への垣根はうんと低くなりました。人口減少で市場拡大の望めない日本を脱出するにはいいタイミングかもしれません。

弁護士も供給過多の時代。私自身も、広い市場に目を向けて、身を立てる術を追求していく時代だと感じています。

弁護士法人アディーレ法律事務所 代表弁護士
石丸 幸人

1972年、北海道生まれ。上場企業に就職後、転職したITベンチャー企業に勤めながら29歳のとき2度目の挑戦で司法試験に合格。2004年より現職。近著に『会社がない!』がある。
(構成=石田純子 撮影=宇佐美雅浩)
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