健康保険、年金の手続きも忘れずに

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こんな兆候が現れたら「倒産」の危険シグナル

ある朝いつも通りに出勤したら、固く閉ざされた扉に「倒産」を告げる貼り紙が一枚……衝撃的な光景ですが、弁護士として何度も倒産の法的処理を行ってきた私にしてみれば、決して珍しい出来事ではありません。

経営に行き詰まって会社を畳むしかなくなったとき、そのシナリオは経営陣によって秘密裏に進められます。倒産の噂が立てば、商品の売れ行きや取引に悪影響が出るので、一般の従業員に「Xデー」の予定が前もって知らされることはまずありません。それがある日突然突きつけられる「倒産告知」の現実なのです。

ではその予期せぬ「倒産」に自分自身が直面したら、どうすればいいのでしょうか。真っ先に行うべきは、経営者もしくは弁護士に連絡が取れるかどうかを確認することです。経営者が雲隠れして、弁護士も立てていないなら、それは法的手続きを踏まない「夜逃げ」ですので、その後の各種手続きに手間取るのを覚悟しなければいけません。

とはいえ、打つ手はあります。例えば、会社機能が停止して離職票が入手できなくても、倒産の事実が確認できれば、失業手当はきちんと支給されます。また、給与の未払いがあっても、労働者健康福祉機構の「未払賃金立替払制度」を利用すれば、その一部を立て替えてもらうことも可能です。対象となるのは、未払いの給与と退職金の8割にあたる金額ですが、上限が定められていて、30歳以上45歳未満の人ならば176万円まで、45歳以上であれば296万円までとなります。