最後に「特殊な事情はないか」。私はランキングを見る際、アウトライヤー=「黒い羊」とも呼ばれる統計において大きく外れた値、つまり例外的な存在に注目するようにしている。たとえば書籍ベストセラーでは、上位に人気作家や宗教家の本が登場することが多い。しかし固定読者が多い人気作家や購買動員力のある宗教家の得票数が伸びるのは当然のこと。そこで私がおそらく質が高いだろうと予想するのは、世間の知名度が低く、なおかつ値段が高いにもかかわらずランキング入りしている本――つまりアウトライヤーである。あまり手に取られない本にもかかわらず選ばれたのは、その面白さが口コミなどで広がり、読んだ人のほとんどが投票した可能性が高い、と考えてみる。
なぜ白い羊の中に「黒い羊」が入ってきたのか?
そうやってアウトライヤーが存在する理由を推測していくと、ランキング作成の意図から漏れた事実の部分、ひいてはどういう条件でランキングがつくられたのかが見えてくる。
最近テレビで「ランキング番組」をよく見かけるが、こうしたデータは真剣に受け止めるものではなく、あくまで娯楽として楽しむ気持ちで接するのがちょうどいいのではないか。
1956年、大阪生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、南カリフォルニア大学行政管理学修士課程を経て、社会学部博士課程を修了。専門は、犯罪学、社会調査論。『「社会調査」のウソ』など著書多数。