「マジ!」シリーズを
生みだした「フリーミアム」
一定期間を「無料化」することで、コアなファンを生む。「マジ!」シリーズの根本であるこの考え方は、ITビジネスの世界で多く活用されている「フリーミアム」というビジネスモデルがヒントになっている。たとえば、近年、若者層に人気で携帯やスマホで遊べるソーシャルゲームも「フリーミアム」だ。ソーシャルゲームは、最初は無料で遊べるものが多い。無料でも遊び続けられるが、ゲームにはまってくると、より有利に進めようとしてお金を払う場面が出てくる。無料で多くの人に体験してもらい、そのうち一部を有料化していくビジネスモデルだ。
もちろん、お金を払うかどうかはユーザー次第だ。ただ、最初からプレイ料金を取るゲームより、まずは無料でゲームの価値を理解してもらうスタイルの方が今の若者には受けていた。この現象を参考にしたのだった。
「スキーやサッカー観戦の魅力が分かるまでには時間がかかります。いわばその“修業期間”をどう乗り越えるかがカギなんですね。だからこそ、修業期間を乗り越えるために『無料』という徹底優遇を行なう。『マジ!』シリーズは、無料のうちに“修業期間”を乗り越えてもらおうという考えなんです」
最近は、「若者の○○離れ」という言葉を聞く機会が多くなった。クルマ離れやビール離れなどがその例だ。これらに共通しているのは、徐々にその楽しさが分かってくるということ。車の運転も、初心者のうちは楽しめる余裕がない。ビールに関しても、最初は嫌っていた苦味が、飲み続けるうちに味わい深くおいしいと感じるようになってくる。
これらの修業期間を乗り越えさせるものとして、以前は、なんらかの「強制力」が働いていた。「乾杯はビールが基本。カシスオレンジで乾杯なんて、ありえない。」という社会通念であったり、「若者ならスキー旅行に行くのがおしゃれでトレンド。」といった大ブームなどである。しかし最近は、そういった強制力は消え、個人の選択と多様性を認める社会となった。良い悪いは別として、その結果が、修業期間のある、さまざまな体験や消費の、若者離れを生んでいるという見方もできる。そのような中で、無料化のアイデアはひとつの参考になるだろう。
「これからも色々な項目について、無料化の応用を探っていきたいと思っています。修業期間に当たる時期を無料化にすることで、何度もリアルに体験をする機会と意欲を生みだす。それにより、その体験が持つ本来の魅力が伝わり、コアなファンが増えてくれればいいですね」
「マジ!」シリーズのモデルは、今後、さまざまなジャンルに派生していくかもしれない。