メイドカフェの先行投資

この連載の第3回「メイドカフェが文化になるには」(http://president.jp/articles/-/9096)で説明したように、メイドさんは「萌え」を生み出す架空のキャラクターであり、メイドカフェはそのための特別な演出空間なのです。そのために、メイドカフェでは普通の喫茶店にはない、特別なコンセプトや世界観が重要になります。「@ほぉ~むカフェ」にも、「お客さまを楽しませる」ために、これまで創り上げられてきた独特の世界観があります。その世界観を表現するため、メイドさんたちは見習いの時に、かなり分厚いテキストをしっかり学ぶことを求められます。そのメイドさんたちの努力を通じて、「@ほぉ~むカフェ」は秋葉原のメイドカフェを洗練された文化にしつつ、ビジネスでも成功することができたのです。

そして今、現役メイド兼社長になったhitomiさんが一貫として持ち続けてきた「多くの人たちに、メイドカフェの素晴らしさを伝えたい」という使命感は、「@ほぉ~むカフェ」をさらに進化させつつあります。メイドブームが去ってメディアでの露出が減ったメイドカフェは昨今、一部の軽率な報道により、いかがわしい場所と誤解され、悪意を持った紛いものと混同されるきらいがあります。そこで、メイドカフェを初めて体験するお客さまにさらに楽しんでもらうため、基本的なサービスや世界観を充実させ、さらに質の高いエンターテインメントを提供できる取り組みを進めているそうです。

さらに「@ほぉ~むカフェ」では、メイドカフェを初めて体験する外国のお客さまにも楽しんでもらえるように、出身国の国旗を箸袋に印刷したお箸をプレゼントしたり、メイドさんたちに英会話の研修を行ったりしています。香港で刊行されている日本の旅行ガイド本に広告を出すなど、先行投資も意欲的に行っています。

京都祇園の舞妓さん文化のように、秋葉原のメイドカフェが文化として次代に発展し伝えられるか、それとも一時の流行で消え去ってしまうか、それはメイドカフェの素晴らしさを理解する店舗や顧客たちの意志と行動に掛かっているのです。メイドカフェの素晴らしさを伝えるため、「@ほぉ~むカフェ」でより多くのお客さまに楽しんでもらいたいと仕事に取り組むhitomiさんの姿勢は、いつか必ずメイドカフェに対する偏見や誤解を取り除き、メイドカフェが文化として認められ、それがまたビジネスの成功につながると私は期待しています。

関連記事
「アイドルの新しい働き方」
「ものづくりを支える電気街の底力」
「メイド社長誕生」の経営的意義 前篇
「コスプレをビジネスにするには(前編)」
「メイドカフェが文化になるには」