買収はUSスチールの悲願だった
USスチールは崖っぷちに立っていた。2008年に240億ドル(約3兆5200億円)あった年間売上高は、2023年には180億ドル(約2兆6400億円)まで急降下。古い製鉄所に新たな設備投資をして新たな息を吹き込む資金も、とうに底をついていた。
経営陣の警戒感は明らかだった。日本製鉄なしでは、古い工場を閉鎖せざるを得ない。CBSニュースは近年、同社がデトロイトとセントルイス近郊の工場を閉鎖し、数千人の組合員が職を失っていたと報じている。放置すれば、次はペンシルベニアの番だ。
救済の希望となったのが、日本製鉄が持ちかけた買収案だ。USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は、米CNBCのインタビューで、率直に語った。「彼らは我々の約3倍の規模だ。それに(鉄鉱石から最終製品の製造までを一箇所で完結する)一貫製鉄所に関し、業界最高のR&Dと技術がある」。なぜ自社で投資できないのかと問われると、株主に対する受託者責任があると、アメリカ企業の構造的限界を認めた。
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