日本の影響は、かくも広い。ところが、面白いことに、ハワイの風光の下で見ると、「日本」は、あまり際立たない。今やハワイそのものといってもよいアロハシャツはもちろんのこと、街を歩いていて目にする日本語までもが、なぜか、景色の中に溶け込んでしまっている。

街で、日本的な顔立ちの人を見ると、つい日系の人か、と思ってしまうけれども、ローカルの人に聞くと、実はよくわからないことも多いという。ハワイという土地では、すべてが、混ざって溶け込んでしまうようだ。

今、経済産業省を中心に、クール・ジャパンの施策が試みられている。マンガ、アニメなどのポップカルチャーをはじめ、魅力ある日本文化を海外に「輸出」しようというのである。

クール・ジャパンというと、日本の文化が、その個性を際立たせたまま海外に行く、ということをイメージしがちだ。しかし、ハワイにおける日本的なものの浸透ぶりを見ていると、違う視点もあるのではないかと思えてくる。

すでに、寿司については、「カリフォルニア・ロール」や、「キャタピラ・ロール」など、アメリカで考案された巻き物が人気となっている。そのような「現地化」「変形」したものこそが、深く浸透した日本の影響の果実かもしれない。

最近では、ホノルルに来る日本人の間で、現地で考案された天ぷらを寿司にしたものが人気だったりするという。そのような傾向が強まれば、逆に日本に輸入されることもあるだろう。

本当にその影響が浸透したとき、かえって、個性は際立たなくなる。文化輸出戦略としてクール・ジャパンは大切かもしれないが、日本の影響は、もっと広く、深く及んでいる。

日本文化の浸透力をハワイで目の当たりにして、何だか元気になった。日本には、まだまだ、世界に差し出すべき「贈り物」が眠っている。

がんばろう、日本。

(写真=はらだま/PIXTA)
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