「おい、この資料をレッコーしといてくれ」
しつこいようで申し訳ないが、建物の床のことは「デッキ」と呼ぶ。これは甲板(デッキ)からきているのは容易に想像できるだろう。さらには「レッコー」というのもある。「おい、この資料をレッコーしといてくれ」と言われても海上自衛官でなければなかなか通じないだろう。
これは英語の「Let go」が由来で、手放すという意味だ。船が出港する際、岸壁と艦錨をつなぎとめていたロープを放つことを英語で「Let go」と言う。旧海軍が大英帝国海軍から教えを乞うた際の「Let go」がなまって「レッコー」になった次第だ。今日でも「2番舫レッコー」などの号令が使われている。ここから派生して、ごみを捨てる際や資料をシュレッダーにかける際も「レッコーしておいてくれ」などと言う。蛇足ではあるが、これは英国系海軍共通用語である。
外の世界の人から見れば、特異な世界に見えるかもしれない。私は統合幕僚会議の事務局長を仰せつかったこともあるのだが、統幕には海上自衛官だけでなく、陸上自衛官、航空自衛官もいる。私の上司である統合幕僚会議議長は陸上自衛官だったのだが、「海では外出のことを上陸って言うんだってね」と聞かれたものだ。自衛隊の中でも特殊な慣行なのだ。
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