日本橋の三越も戦後はボロボロだったが…

しかし、館内に一歩足を踏み入れてがっかりさせられた。物資不足で建物のメンテナンスができず、壁の壊れた箇所はベニヤ板や切れ端の木材で塞いだ応急処置でごまかしている。また、どこの売り場もガラスケースの中はすかすかで空き場所だらけ。食品売り場には乾物や漬物しかなく、まるで下町の商店のような有様だった。これが日本を代表する百貨店の現状、終戦直後からの極限状態がまだつづいていることを思い知らされる。

陳列できる商品がなく、スペースが余っている。上の階は事務所として使われ、やなせが勤務する宣伝部もその一角にあった。