一方、稼ぎの面では不利な立場にある非正規の人はどうすべきだろうか。非正規は正社員に比べてその働き方にメリットもある。まず自分の好きな、もしくは自分に向いている仕事を選択することができ、定年退職などとは関係なく長く働き続けられる。50代以上になってリストラされ「使い捨て」される正社員も少なくないなかで、常にアンテナを張り経験を積めば独立・起業も視野に入れることができる。またそれが成功すれば収入面でも正社員を大逆転する可能性もある。
「そもそも収入が多くても幸せとは限りません。高収入の正社員世帯でも浪費癖で家計がボロボロの場合も多いですからね。非正規の世帯では節約と貯蓄を心がけ、その働き方に見合ったレベルの生活を構築することができれば幸せな生活を送ることは十分可能です」(山崎氏)
もちろん正社員への道を模索し続けることも重要だと山崎氏は言う。そして、人生のマネープランのひとつとして、「現在契約や派遣として働く職場で正社員の伴侶を見つける努力もすべきですね。共稼ぎは経済的安定として重要です。仕事は辞めずにしっかり稼ぎ続ければ教育費負担、住宅購入、老後準備も乗り越えられるはずです」(山崎氏)。
逆に言えば、非正規の独身者で将来、親の住む家を貰えるアテがないなら、マネープランも若いうちから綿密に組まないと老後が苦しくなる。
既婚男性が「一生に貰えるお金」をより多くしようと考えた場合、正社員と非正規の両方に共通して言えるのが、妻の収入を増やすようにすることだ。
「夫婦ともに正社員の世帯のメリットは、ダブルインカムだけでなく、双方に退職金があることです」(山崎氏)
「共稼ぎ夫婦でいずれも非正規雇用という世帯でも、正社員の夫と専業主婦の妻の世帯よりも世帯収入が多いこともありますからね」(井戸氏)
夫が正社員で妻が専業主婦の場合も、「妻が年収100万円の仕事を10年間するだけで、その1000万円の蓄えが老後(20年間だとして)に年金プラス月々約4万円のゆとりになる」(山崎氏)。
井戸氏の試算によれば、妻が130万円以上稼ぐと妻の社会保険料の支払いが開始され、夫と合わせた世帯の手取額は減少するケースがある(図8、9)。妻の収入が増えると配偶者特別控除が段階的に減るなどして夫の負担が高まり、せっかく妻が働いたのに損することもあるのだが、「妻がたくさん働けば老後に妻自身が受け取る年金額も増え、夫婦で一生に貰えるお金は多くなります」(井戸氏)。
各データの出典など/(9)「妻の収入で夫婦の手取額」は井戸氏による東京23区における試算(概算)。健康保険は協会けんぽ(東京都)で夫婦ともに40歳未満という設定。