見えない力がぼくをまもった

やなせ自身「運命を感じた」と語るエピソードがある。

清は、東亜同文書院の卒業旅行で中国全土を回ったが、その際通った太平洋岸の山岳地帯を進むルートが、やなせが陸路で福州から上海まで行軍した道のりと、一部偶然一致していたのだ。

「お父さん、この景色を見せたかったんだね」――。1日40キロを歩く過酷な行軍の間、やなせは何度もそうつぶやいたという。無事に上海にたどり着いた後、2センチほどに分厚くなった足の裏の皮がポコンとはがれたというのだから、いかに厳しい道のりだったかがよくわかる。やなせは著書で、当時をこう振り返っている。